だれからも好かれるお店とは?
いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
僕は渋谷でbar bossaを開店する前に下北沢のフェアグランドというバーで2年間バーテンダー修行をしました。そのバーのオーナーは中村悌二さんという方で、今では飲食業界で知らない人はいない、すごく有名なプロデューサーです。そして僕が修行していた頃もよく、そのバーに「飲食店をやりたいのですが、相談にのってください」という若者が来ていました。
僕は色んな「いつかお店をやりたい若者」のケースを見て本当に勉強になったのですが、ある時、こんな男性が中村さんに相談に来ました。
いわゆるカフェというか街の食堂というかそういう飲食店をしたいそうなのですが、「おじいちゃんから、赤ちゃん、外人から、お洒落な芸術家、OLさんや貧乏だけど夢はある若者まで、色んな人種が集まっているようなお店」を目指したいとのことでした。
その彼の言葉に対して、中村さんが「あのね、そんなお店はありえないよ。お店って言うのは『こういう人に来てほしい』って絞り込むのがまず先だから。すごくお金を持ってて遊び慣れている人が好むお店とか、子供連れの家族が入りやすいお店とか、外人が好きなお店とか、まず来る人を考えるのがお店づくりの第一歩だから。そして、もし、万が一、みんなが好きなお店っていうのを作れたとしても、そんなお店、誰も行かないよ」と答えました。
さて、ちょっと想像していただけますでしょうか? みんなが好きなお店。おばあちゃんも、お金持ちも、外人も、お洒落な業界人も、オタクっぽい人もみんなが好きなお店。
まず最初に思いつくのがファミレスとか郊外にある回転寿司屋さんですよね。でも、そういうお店はお洒落な業界人やお金持ちは決して好みません。じゃあそういうお店にちょっとセンスの良いインテリア・デザイナーを採用して、そして扱う料理もフレンチの要素も取り入れてってなると、そういうのは緊張して落ち着かないっていう人が、たくさんでてきますよね。