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海外で結束しない日本人たち
シンガポールの日本人社会は巨大だ。外務省の最新統計では2万7千人を超え、ロサンゼルス、上海、NY、バンコクに次いでシドニーと5位を争っている。アジアではバンコクに次ぐ大きさだ。
これは世界中の日本人社会に言えることだが、私の印象では、その内部がクラスター別に分かれている。海外での日本人社会という大きなくくりの中で、多くの人が家族や会社単位という非常に狭い世界に留まっており、せっかくのご縁を分断してしまっているように思う。
シンガポールの日本人社会は、大別すると以下のようなクラスターに分類され、それぞれがその中での交流に終始している。
・政府関係者・大企業駐在員クラスター
・起業家クラスター
・半引退富裕層クラスター
・ローカルスタッフ(外資系含む)クラスター
・留学生クラスター
・長期移民風クラスター
もちろん、各クラスターを自在に行き来する人もいないわけではない。だが、たいていは特定のクラスター内で交流し、他のクラスターとはほとんど交流がないようだ。
海外でこそ序列関係が浮き彫りに?
私も日本人なのでこうなってしまう理由はよくわかる。海外の日本人社会には、古典的な序列関係が固定化しているため、特有の難しさがある。特に最大クラスターである駐在員の社会がそうだ。大使を頂点に外交官、政府関係者、銀行、商社、大メーカーといったように、昔の日本社会の序列(昔の就職ランキング?)が、なぜか海外のほうがしっかり残っている。そのため、起業家クラスターや独立独歩の富裕層クラスターはこういう大企業駐在クラスターとの付き合いを避ける傾向にある。
サラリーマン社会の中では、企業の格だけでなく、さらにその肩書きによる序列が“空気の中”で共有される。起業家や富裕層は、そもそも独立意識が強く、サラリーマンに見下されるのが嫌いだから、「わざわざチャンスを求めて海外までやってきたのに、そこで大企業サラリーマンに上から目線で見られてはかなわない」というところが本音だろう。
私もサラリーマン出身なのでその気持ちがよくわかる。ただ、シンガポールの大企業駐在員クラスターの方々と交流してみて、時代も感覚もだいぶ変わってきていると感じている。いろんな人がいらっしゃるのだろうが、いい意味で、非常にくだけた、オープンな方々が多い。