オリーブ少女の「恋愛能力」

『ユーミンの罪』が好評の酒井順子さんが、雑誌『オリーブ』とその時代、女の子達に与えた影響を分析します。最終回となる今回は、『オリーブ』の恋愛特集、男の子特集を振り返ります。
この連載に、新たな書き下ろしを加えた『オリーブの罠』 (講談社現代新書)が発売されました。マーガレット酒井先生が復活する「元オリーブ少女&少年の面接時間」全4回も収録! オリーブの罠、とは何だったのでしょうか?

本気でモテようとしていない

 いくら聖少女ぶりっこをしていたとはいえ、オリーブ少女達が男性に対して興味が無かったわけではありません。読者達が異性に一番興味があるお年頃であるというのは作り手側も理解していて、男の子特集や恋愛特集は、しばしば行われています。
 しかし『オリーブ』が読者対象としているのは、あくまでも処女でした。恋愛特集においても、「デートする」とかせいぜい「キス」くらいまでしか、想定していない。
『オリーブ』がロマンチック路線に変更した後、初めて恋愛関係の特集がなされたのが、一九八三年十一月十八日号(第三十四号)かと思われます。特集タイトルは「オリーブ少女のためのロマンチック・デート」というもの。

『オリーブ』 1983年11月18日号

 この表紙を見ただけで、既に大人である私は「ああ、駄目だ」と思うのです。表紙に登場するのは、やはり顔と手しか露出していない、つまり男心を全くそそらない服装をした外国人少女モデル二人で、あろうことかその二人は抱き合っている。
 これはおそらく、「恋に恋する少女」を図式化したもの。二人のうちの一人であるフェイは当時の『オリーブ』における人気モデルで、私も大好きだったっけ。そして私も「おしゃれライバル」の友達と、このポーズを真似して写真を撮ったものだったっけ。

 この、「女同士の過剰接近」も、『オリーブ』誌上ではよく見られる現象です。処女の少女は、異性を知らないだけに同性同士で疑似イチャつきを繰り広げがちなわけで、そんな姿が『オリーブ』誌上ではおしゃれに表現されました。それを見た我々がさらに真似をして女同士で接近する……という悪循環が繰り広げられていたものです。『オリーブ』は、女同士の距離を縮める役割を果たした雑誌でしたが、女に好かれる女が男に好かれるわけではないということを、この頃の私達はまだ知りませんでした。

 ま、それはいいとして、この号の表紙だけでも、オリーブ少女はデートを夢見ているだけで、本気でモテようとなどしていないことが一目瞭然。ページを開くと、
「オリーブ少女だから、おしゃれして男の子を誘え!」
 という大特集が。男女交際がしたいのかおしゃれがしたいのかはっきりしろ、と言いたくなってきます。世の中では、ニュートラ派の女達が男性に好かれるテクニックをどんどん身につけているというのに、オリーブ少女はデートの時すら、「男の子が好む格好」でなく、「自分が好きな格好」をしようとしているのですから。

劣情をそそらない「おめかし服」

 一九八五年四月三日号(第六十五号)では、「オリーブ/ポパイ共同編集 オリーブ少女のデート作戦!」という特集が。これは、表紙も男女のカップルだし、『ポパイ』との共同編集だというし、「おお、『オリーブ』もやっと男女交際に本気を出したか」と思わせます。

『オリーブ』 1985年4月3日号

 が、やはり最初の特集を見てがっかり。それは、
「デートの日には、思いっきりおめかし!」 
 というものであり、「やっぱり服のことしか考えてない……」と、大人になった私をイライラさせます。その「おめかし服」はやっぱり、脚すら出さない露出度の低さ&だぼだぼで、男性の劣情を全くそそらないものなのでした。
 『オリーブ』読者が少女であることを考えれば、それは仕方がないのかもしれません。いくら『ポパイ』との共同編集であっても、大学生である『ポパイ』読者は、実際は『オリーブ』読者とデートなどせず『JJ』読者が張り巡らせた網にあっさりとひっかかっていたはずなのですから。

 この特集の前文(もうお気づきでしょうが、『オリーブ』において何か大きな特集が行われる時は、その時の思いを込めた「宣言」と言える、見開きの前文が記される)は、
「デート体験、ありますか?」
 で始まります。そして切々と説かれているのは、「男の子に主導権を握らせてはいけない」ということ。デートコースを決めるのはいつも男の子とか、デートに遅れてばかりの男の子をやすやすと許してはいけない。そして花模様のロマンチックなワンピースを見つけても、彼が気に入らないからとしょんぼりしていては「オリーブ少女失格」、ともしてある。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
オリーブ』の罠

酒井順子

『ユーミンの罪』が好評の酒井順子さんが、雑誌『オリーブ』とその時代を振り返ります。この連載に、新たな書き下ろしを加えた『オリーブの罠』 (講談社現代新書)が発売されました。マーガレット酒井先生が復活する「元オリーブ少女&少年の面接時間...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

hotchilipie ピンクハウスとか着ちゃう人の子だもん。あとこれ読んだけどその通り過ぎて笑えない。 https://t.co/KytlclxsXW 3年弱前 replyretweetfavorite

pinkphare 思い当たるふしあり! #オリーブ 少女の行く末。。(´Д` ) 笑 https://t.co/O2RWC8AzV2 3年以上前 replyretweetfavorite

chieko_hk リアルタイム読者でしたが、本当の 3年以上前 replyretweetfavorite

ichirobby さまざまな葛藤や矛盾と対峙しながら、パーソナリティーって育まれるんですねw やっぱ青春って最高に贅沢な時間だな  3年以上前 replyretweetfavorite