—— ジブリ映画を生で見る意味って、スマートフォンやSNSが普及したことで増しましたよね。放送に合わせて「バルス」って言いたいから(笑)。
下川猛(以下、下川) かなり多くの人が反応してますよね。
—— 今回のアプリ連動フェイクドキュメンタリー番組『SHARE』は、前例のないある意味では冒険だと思うんですが、なぜこのような企画を考えたんですか?
下川 ネットがでてきてから「テレビはつまらなくなった」「若者はテレビを観ていない」ということを常々言われています。この数年間、私は新しいテレビの可能性ってなんだろうということを考えてきました。
—— その一つの答えがアプリ連動のインタラクティブな番組ということですか。
下川 はい。これまでの視聴者との双方向のやり取りは、基本は生放送中のアンケート企画や投票企画が多かったです。
—— 自分が番組にコミットした、テレビから反応が返ってきたというのはおもしろいです。
下川 その流れの中で、新しいテレビに対する僕なりの答えを、いろいろな形で見せていって、視聴者が増えたらいいなと思って企画を立てました。
中村洋基(以下、中村) 下川さんみたいなヘンな人(笑)がいろいろやっているのは、テレビに対して危機感があるからです。テレビ番組全体の視聴率の低迷やますます厳しくなる自主規制の問題があり、そんな中でどうやって新しい表現ができるかを考えている人なんです。
—— 『SHARE』はそういう意味で、だいぶチャレンジしているんでしょうか。
下川 ええ。今までは番組の企画ができた後にインタラクティブを乗せるケースがほとんどでした。ただ今回は、脚本を作る段階からアプリありきで考えて進めていたので、制作者として、けっこうな手間と熱量を込めています。これまでは、視聴者がスマートフォンを使って新しい体験ができる、ちゃんと作り込んだものがあまりなかったですから。
—— テレビにフラストレーションがあったということですか?
下川 もちろん今までだって、今だってテレビっておもしろいものだと思っていますけど、「おもしろくないものも増えちゃった」もしくは「おもしろさが伝わっていない」の両方ですね。もっとできるんじゃないか、おもしろいけれど伝えきれていないんじゃないか、という残念な気持ちでしょうか。
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