加藤崇 vol 2. 本は、核となる4%の要点を探りながら読む

経営再建が必要になった企業や、成長著しいベンチャー企業を、プロの経営者として支援している加藤崇さん。仕事の上で参考になった本を聞くと、意外にも政治思想家の本の名前があがってきました。はたしてその理由とは? また、ただ漫然と本を読むのではなく、構造化された知識として本の内容を頭に入れるために加藤さんがしていることもお聞きしました。

本は、核となる4%の要点を探りながら読む

— 最近読んだ本で、おすすめはありますか?

加藤崇(以下、加藤) マイケル・ルイスの『THE BIG SHORT(邦題:世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち)』ですね。サブプライム・ローンが破綻したときに、逆張りしていた人たちを追ったノンフィクションです。これは、僕が最近やったことにも似ているなと思っていて。ヒト型ロボットという誰も注目していなかった事業の可能性を信じて人生を賭けたことで、結果として経済・社会に大きなインパクトを残すことができた。マイケル・ルイスの本は『マネー・ボール』や『ライアーズ・ポーカー』など、ベストセラーになっているものが多いのですが、新刊が出たら絶対読むようにしています。大好きなんですよ。

— 他に好きな作家はいますか?

加藤 『フェルマーの最終定理』『暗号解読』などを書いたサイエンス・ライターのサイモン・シンも好きですね。読後感がすがすがしいんです。僕が読んでいる本って、青春ものか、科学技術ものか、ビジネスのロールモデルになりそうな人の本。大抵その3カテゴリに分けられる気がします。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

— その他のジャンルはあまり読まない。

加藤 あ、その3つではないけれど、すごく影響を受けた本があります。アレクシス・ド・トクヴィルというフランスの政治思想家が書いた『アメリカの民主政治(※)』です。新興国であるアメリカと伝統あるフランスを対比して考察した、ものすごく分厚い本。もう180年くらい前に書かれた本ですけど、アメリカという社会の成り立ちを、すごくクリアに捉えている。トクヴィルはめちゃくちゃ頭のいい人だと思います。どの章も非常にためになるんです。
※ 現在は『アメリカのデモクラシー』というタイトルで文庫化されている

アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)
アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)

— いつ頃読まれたんですか?

加藤 2005年頃だったと思います。その頃の僕は、「資本主義とは一体なんなのか」ということについて、すごく悩んでいたんですよね。大学では物理学を専攻していたので、ビジネスという畑違いの世界に足を踏み入れてからというもの、一時的にであれ拝金主義がまかり通る経済や、富が社会の中で公平に分配されているのかなど、資本主義が抱えるいくつかの根本的な問題について大いに悩みました。それまで自分が正しいと信じてきた道徳的観念と、ビジネスという現実世界で起こっていることの間に、折り合いがつかなかったんです。

— はい。

加藤 そのとき、『アメリカの民主政治』がすごく助けになりました。この本によって、今の資本主義の構造がよくわかったんです。アメリカは現代の資本主義を代表する国ですよね。株式会社という概念をうまくハンドリングしているのもアメリカです。エリート教育をやってうまい階層制度をつくりつつ、公平な民主政治を標榜して動いている特殊な社会でもある。アメリカの成り立ちを知ることで、どういう発想のもとに資本主義というものが成り立っているのかが、腑に落ちたんです。

— なるほど。

加藤 あとは、オーストラリアでのMBA留学から帰ってきて、企業再建の案件に携わるようになってから参考にしたのは、マキャベリの『君主論』です。あれは僕の愛読書ですね。

— マキャベリと聞くと、目的のためなら手段を選ばないといったような、ちょっとこわいイメージがあります(笑)。

加藤 そうでしょう。『君主論』に影響を受けているなんて言うと、「加藤さんのところで働きたくない」って言われちゃいそうだなと思いました(笑)。でも、これは日本人が取り戻さないといけない経営の本質なんですよ。ちゃんと読みこめば、最終的に国家を合理的に繁栄させることで、力無き人たちも包含して社会全体を豊かにしていこうという現実主義的な発想が、マキャベリズムの根底にあることがわかります。

— 話題は変わりますが、本を読むときは紙と電子とどっちが多いですか?

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本棚は人を表す、といいます。本連載は、さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人のもつ本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひも解いていこうという試み。本がいまの自分をつくったという人から、ほとんど本を読まない人の本...もっと読む

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