加藤崇 vol 1. 人生のロールモデルを、本のなかに探していた

さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひもといていくインタビュー。今回のゲストは、Googleに買収されたことで一躍有名になった、ヒト型ロボットベンチャーSCHAFTの共同創業者兼元CFO、加藤崇さんです。
SCHAFTに参画する前は、企業再生のプロとして、成城石井や牛角といった小売・外食グループの再建担当役員も務めた加藤さん。大の本読みでもあり、小説からビジネス書まで、さまざまなタイトルをおすすめしてくださいました。

人生のロールモデルを、本のなかに探していた

— 加藤さんは昔から本好きだったのでしょうか。

加藤崇(以下、加藤) 僕、ちゃんと本を読みだしたのって高校生からなんです。そのとき夢中になって読んでいたのが、庄司薫さんの本です。日比谷高校3年生の「庄司薫くん」を主人公とした『赤頭巾ちゃん気をつけて』。そこから、『白鳥の歌なんか聞こえない』『さよなら快傑黒頭巾』『ぼくの大好きな青髭』と続く四部作なんですけど、これがとてもおもしろいんですよ。

— 『赤頭巾ちゃん気をつけて』は芥川賞受賞作ですね。これらの作品のどんなところをおもしろいと思われたのでしょうか。

加藤 多感な時期の若者の悩みが、あまねく網羅されてるんですよね。『赤頭巾ちゃん気をつけて』は、女の子と付き合うことについてだし、『白鳥の歌なんて聞こえない』は死について。『ぼくの大好きな青髭』は学生運動の話なのですが、学生運動って理想郷を求めることだと思うんですよ。理想的な社会とはなにか、ということをナイーブに学生が考えた結果、運動が広がっていった。

— はい。

加藤 このシリーズには若者だからこそぶち当たる壁と、そのときの若者の気持ちが、丁寧に描かれているんです。しかも庄司薫さんはこの四部作のあと、小説はもう出してないんですよね。そういう引き際のよさも素敵だな、と思っていました。

— 作家としてのスタイルにも惹かれていたんですね。

加藤 大学生の時に読んだのは、五木寛之さんの『青春の門』シリーズ。伊吹信介という九州の筑豊で生まれた少年の成長譚です。2つ目の「自立編」で、彼は早稲田大学に入ります。大学で信介は政治運動に身を投じることになり、だんだん大学も行かなくなって、赤線(※)の女性の家に入り浸るようになるんですよ。そのあたりが4作目に書かれていて。
※ 日本で1958年3月以前に公認で売春がおこなわれていた地域の俗称

— 第4部は、「堕落編」ですね。

加藤 はい。主人公はお金がないから、朝、献血しに行くんです。昔は献血したらお金がもらえたんですね。そしてその金で飯を食って、また赤線の女の子の家に戻ってセックスして、という荒廃した毎日を送る。そうすると、だんだん自分が何をしてるのかよくわからなくなってくるんですよ。でも、坂口安吾の『堕落論』じゃないですけど、人間は下の下まで落ちて、底辺に触れると、そこで「ゼロ」を発見するんです。

— なるほど。

加藤 ゼロを知ることで、1や2、3の価値がわかってくるんです。生まれた時から5や10の生活をしていると、その価値はわからない。そうして、信介はいろいろなものの価値に気付き始めて、今度は演劇に目覚めるんです。いま単行本では第7部の「挑戦編」まで出ています(※)。
※ 「第8部 風雲篇」については1993年7月から1994年4月にかけて雑誌『週刊現代』に掲載され、掲載は終了しているが単行本化されていない。

自分ができないことを、本の主人公が体験してくれる
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プロフェッショナルの本棚

ホンシェルジュ

本棚は人を表す、といいます。本連載は、さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人のもつ本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひも解いていこうという試み。本がいまの自分をつくったという人から、ほとんど本を読まない人の本...もっと読む

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