第2回】地方ロケで出る大皿料理は「無理」

数多くのテレビ番組に引っ張りだこ、その姿を見ない日はないんじゃないかとさえ思える、新しき「視聴率男」、蛭子能収さん。小さな頃から「分相応」的なものに自分らしさを感じ、「他人に害を与えない」ことを一番大事に考えてきたと言います。友達だって少ないかもしれないけれど、それは別に悪いことでもないと思う、と。この連載では8月に発売された新書『ひとりぼっちを笑うな』から、エッセンスを抽出してお届けいたします。さあ、「蛭子流・内向的な人間のための幸福論」をお楽しみください。



大皿料理は大の苦手

 テレビのロケで地方に行ったときは、収録終わりに出演者とスタッフで「みんなで一緒にご飯を食べましょうか!」という流れになることが多いんです。地元のおいしいと評判の料理屋さんに行って、広いお座敷みたいなところに案内されて、と。その土地の名産を大皿で出されます。

 それをみんなで、ワイワイ言いながら箸でつつくわけです。「やっぱり、地元の名産はおいしいね!」とか言い合いながら。言ってみれば、その仕事が無事に終わったことを示す、簡単な打ち上げですね。  でも、この大皿料理っていうのが、僕はどうも苦手で……いつも、つき合い程度に箸をつけるだけで、「ひとり分のカレーライスが食べたいなあ」「早くお開きにならないかな」と、頭のなかで思いながらやりすごしています。

 お開きになってみんなと別れたあとは、すべてから開放された気分で心が満たされます。その足でひとりぶらぶら街に出て、自分の好きなものを食べに行く。  そもそも、他人が箸をつけたものを自分の口に入れるっていうことが、生理的にダメなんですよ。別に特段、潔癖症というわけではないし、それが汚いとか、自分がきれいと思っているわけでもない。でも、昔からダメなものはダメというだけなんです。

 振り返れば、子どものころからずっとそうだったかもしれない。友だちの家に遊びに行って、そこで夕飯をごちそうになったりするのが、すごく苦手だった。でも、そこで断るのも悪いから、なるべく頑張って我慢しながら食べる子ども時代の自分がいました。何度も何度も戻しそうになりながら……。それはそれで失礼だったのかもしれませんが、とにかく、知らない人が箸をつけたものを、自分の口に入れるという行為が苦手なんです。  だから、本当ならば、みんなで食事をする際は、お弁当みたいなものが理想的かな。お弁当のように、〝これは自分で食べる分〟と決められたものを、誰とわけるでもなく誰になにを言われるでもなく、あくまでも自分の好きなペースで食べる。もちろん、できれば誰もいない場所でひとりぼっちになって食べたい。

 でも、そういうことを人前で言うと非難されるのがオチです。実際、何度も非難されてきました。「みんなで一緒に食べているのに、蛭子さんはなぜそんなことを言うの?」「蛭子さんは協調性がないよねー」ってな具合に。だから、いまは少しだけ迎合してみんなで食べるようにしていますが、本当のところは、やっぱりひとりぼっちで食べたいんですよ。

 弁当と言えば中学生のころ、クラスみんなのお弁当をのぞいてまわるのが好きな生徒がいました。「蛭子の弁当に入っている卵焼き、うまかごたるね(うまそうだね)」とか言いながら、他人の弁当を見てまわるような生徒です。そういう子って、どのクラスにもひとりはいましたよね。で、「こいば(これ)、一個くれろ」とか言って、パクッて食べたりするんですよ。

 その行為が僕にはどうにも信じられなかったし、その生徒に自分の弁当を見られるのもイヤだったんですね。もし見られたら、絶対「オカズば換えて!」とか言い出すに違いないし、自分の性格上、そう言われたらきっと断れませんから。  だから、教室のすみで弁当を隠しながらこっそりと食べていました。そんなことをやっていると、「ケチ~!」とか「蛭子は欲張りだなあ」とか言われたりするんですけど、そういうことじゃないんだよなあ。  他人のお母さんが作った他人のオカズを食べるのもイヤだし、自分の親が作った自分のオカズを誰かに食べられるのもイヤ。ただただ、それだけの理由なんです。

 だから、ケチとか欲張りみたいな話ではないし、別にその人のことが嫌いということでもありません。そう、嫌いじゃないからこそ、相手になるべく失礼なことはしたくないんですよ。他人が箸をつけたものを食べたくないとか、自分のオカズを誰かにあげたくないっていうのは、逆に自分がそういうことをされたらイヤだからという理由がきちんとあるんです。

 自分がされてイヤなことは、他の人にも絶対しない。それが蛭子の基本ルールです。



食事会や飲み会はムダ話の宝庫
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

角川新書

この連載について

初回を読む
ひとりぼっちを笑うな

蛭子能収

小さな頃から「分相応」的なものに自分らしさを感じ、「他人に害を与えない」ことを一番大事に考えてきた。友達だって少ないかもしれないけれど、別に悪いことでもないと思う。蛭子流・内向的な人間のための幸福論。

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

yinghuamei2 ⇒あー、これわかるなあ。私も食べ物のシェアとか「ひとくちちょうだい」とか苦手なんだよね。蛭子さんと同じく相手の事が嫌、っていうのじゃなく、ただ嫌なものは嫌っていうね。 2年以上前 replyretweetfavorite

nepihapy たまたま読んだエッセイ。でも。すごーーく解る。私もこのエッセイと同じ気持ちで生きてるかも…Σ(゚▽゚;)!!私「蛭子派」かな?(笑) 3年以上前 replyretweetfavorite

necoike わかるわぁ…。俺は鍋料理が(会話の途中で手を出すタイミングがわからなくて)全く食えない。 4年弱前 replyretweetfavorite