篠田真貴子(以下、篠田) 前回お話した「クリエイティブの3つの輪」の図、これって糸井重里事務所だからワークするという、限定的な話じゃないと思っているんです。
多くの会社でこういうかたちの仕事をする場面はあるはず。消費者と直接かかわる仕事をして価値を生むという、普遍的なところまで汎用性がある話だと思ってもらえるといいなあ、と。
—— たしかに、世の中にあるヒット商品やコンテンツは、結果的にこういうやりかたでつくられていることはけっこうあると思います。ただ、それを、組織論として考えた人があまりいなかったんじゃないでしょうか。
篠田 そうなんです! みんな、個に寄せて考えてしまうんですよ。制作者のクリエイティビティとか、天才マーケターがいたとか。話としてはわかりやすくてキャッチーなので、そうしたい気持ちもわかりますけどね。その問題の一端は、ほぼ日に来るまでの私みたいな、ゴリゴリのビジネスの世界で仕事をしている人たちに、クリエイティブへの理解がまったくないことなんですよ。
—— はい。
篠田 ウェブの世界でもテクノロジーが好きすぎる人は、この3つの輪が見えていないことがあると思います。本当はウェブってすごくBtoCなんですよね。だから消費者向けのビジネスと似ているところがたくさんある。でもテクノロジー発想でウェブサービスをつくる人は、「動機」が技術を発展させるところに寄っていて、「実行」だけで全部突破できると思っているふしがある。
—— 今まではウェブがインフラ整備の段階だったからそれでも成り立っていたと思うんですけど、これからはそうはいかないですよね。
篠田 事業家や投資家などこれまでクリエイティブと縁遠かった人たちが、こういったロジックを私よりももっと深く理解して、ビジネスになるところまで進化させてくれたらいいな、なんて思ってるんです。クリエイティブというものをつぶさずにね。
—— なるほど。そういったことを考えていらっしゃるんですね。
クリエイティブだって、一大産業になる
篠田 1年半くらい前から、じぶんのミッションはこれまでの環境を整えるのではなく、今後の糸井重里事務所に向けたものに変わってきていると思っています。