入社時、まわりはハラハラしていた
—— ほぼ日に入ったとき、篠田さんはまわりからどういう人だと思われていたんですかね。というのも、おそらくほぼ日にとっては、それまでいなかった経歴の人だったと思うんです。
篠田真貴子(以下、篠田) 糸井や同僚は、「篠田はなじむのが記録的な早さだった」と言ってくれます。私自身はずっとほぼ日のファンだったので、初めて出社した日も「きゃー、ほぼ日ハラマキがいっぱいあるー!」なんて盛り上がってました(笑)。
—— そうだったんですね。じゃあわりとすんなり。
篠田 でもそれって、もっと違和感のある人じゃないか、という不安の反動だと思います。来るまでは違う世界の人だと思っていたら、案外普通の人だった、という(笑)。「あ、英語じゃなくて日本語しゃべった!」くらいの感覚だと思いますよ。
—— 外資系から来たぞ、と(笑)。
篠田 すぐなじんだとはいえ、まわりをハラハラさせることも多かったと思います。それまでほぼ日にいた人のほとんどは、糸井の得意分野で仕事をしてますから、糸井に「それはどうかと思います」とは言いづらい。私はもとから守備範囲が違うと思っていたので、糸井にも「そうじゃなくて、こうしましょう」とバンバン言ってしまっていました。
—— おお。
篠田 私はそれまでの経験から、予算や人事制度などをかたちとして導入したいと言い、糸井は「やってみてもいいけど、どうかなあ」と返す。しばらくは、そういうやりとりが続いていました。糸井にとっても、それまでそんな提案をされてこなかったから、それがなぜ「なんとなく気持ちわるい」のか、じゅうぶんに言語化できなかったんだと思います。
—— 予算とか、けっこうがっちりしたものを導入しようとしていたんですね。
篠田 はい。予算はけっきょく、予測というかたちに落ち着きました。けっこう緻密につくっていて、予測の精度は高いです。でも、いわゆる大企業のように、目標数値として設定して「これ必達ね」と命じたり、開発費はいくら、交際費はいくらと経費を守らせたり、ということは一切やっていません。だからみんなにも「トータルで今こういう予測です」と伝えるだけ。
—— クリエイティブの商品がいくら売れるかって、ギャンブル的な要素がありますよね。本なんかもそうなんですけど。
篠田 ほぼ日に来て気づいたんですけど、予算で管理すること自体が、大型製造業の管理に向いている手法なんですよね。だから、ほぼ日のような事業には別の方法を考えたほうがいいと考えるようになりました。腹落ちするまで3年はかかりましたけど(笑)。
採用のプログラムは、毎回ゼロからつくる
—— それで、糸井重里事務所に入られてから、もうじき6年になる。
篠田 今年の10月で6年ですね。
—— 入ったときに40人だったという社員の数は、何人になったんですか?
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