8月2週目の主なできごと
・日本マクドナルド 肉問題で7月の売上高大幅減(8月5日)
・まんだらけ 万引き犯に顔公開と警告 賛否(8月6日)
・安倍首相、終戦記念日に靖国神社参拝見送りへ(8月9日)
・夏の甲子園 開会式が台風接近、降雨で54年ぶりの開会式中止(8月9日)
・関根麻里、韓国人歌手Kとの結婚報告(8月10日)
「理由のない殺人」の理由を探すことに意味があるのか
——前回の九龍さんのイケメンすぎる木村拓哉のエピソード、ファンの間でかなり話題になってました。
九龍ジョー(以下、九龍) せっかく呼んでもらったので、貢献できてよかったですよ(笑)。
速水健朗(以下、速水) 今回もまた九龍さんに来ていただいてます。今週の話題ですが、避けて通れないのが長崎・佐世保の例の事件ですけど。
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 高校1年生の女子生徒が同級生を家に呼んで殺害したっていう。
速水 一応、事件の概要からはじめると、7月26日に長崎県佐世保市で女子高生の親が、娘が帰宅しないと警察に捜索願を出した。一緒に遊んでいた当時15歳の佐世保市内の県立高校の1年生の女子生徒が怪しいと踏んだ警察が、彼女の独り暮らしの自宅マンションに踏み込んだところ、その女子生徒の絞殺死体が発見されたと。
おぐら 高校生1年生で独り暮らしとか死体がバラされているとかのインパクトから、しばらくニュースはこの事件一色でしたね。
速水 動機は、怨恨ではあり得ない。殺害後、首と手首を切断しているから。死体を切り刻むケースって、実は運ぶための便宜上ってのが多いんだけど、この件の場合、加害者は事件数日前に「人を殺してみたい」と継母に話をしてる。未成年の女性による猟奇殺人ということで、当然、メディアもネットも大騒ぎ。
九龍 殺人に至る前に兆候はいくつもあったらしいですね。クラスメートの給食に漂白剤をスポイトで混入させたり。
速水 典型的な猟奇殺人の前兆をいくつも残してます。毒物の混入は、小6時代に何度か繰り返してるし、中学時代にも動物の虐待の事実が把握されていた。
おぐら 父親をバットで殴っていたりもしますね。
速水 今年の3月、父親が寝ているところをバットで正確に頭を狙って振り下ろした。ちなみに昨年秋に母親が亡くなっていて、この死は特に不自然なものではないけど、父親はすぐ後に再婚したという。
おぐら 父親の問題は結構取り上げられてますね。相続のために、加害者を祖母の養子にしていたり。
速水 父親は弁護士で地元の名士。1人で住んでいたのは、見るからに高級なマンション。バット殴打事件ののちに、独り暮らしをさせることになって殺人に至った。この子、成績も優秀だったようで、通っていた高校は村上龍やiモードの松永真理など多くの著名人を排出している学校。ちなみに村上龍の小説『69 sixty nine』の舞台になった学校でもある。
九龍 海外留学の予定もあって、母親も教育熱心だったっていうし。もともと母親も名士で、佐世保市の教育委員や子育て系のNPOの代表を務めていたりしたんですよね。文化資本が高い家庭というか、子どもの教育には投資を惜しまなかった。
おぐら 好奇心が強くて早熟な子っていうのも典型ですよね。医学に興味があって、解剖の関連書を読んでいたという報道もありました。
九龍 どうしてもイギリスの『グレアム・ヤング毒殺日記』とかを思い出してしまうんですよね。14歳の少年が継母を毒殺する過程を詳細に日記につけていて、それがノンフィクションになってるんだけど、彼もやっぱり早熟なんですよ。ヒトラーの『我が闘争』を信奉しちゃってたりするんですけど。
速水 日本でもそれを真似した女子高生がタリウムで母親を殺そうとした事件が2005年あった。この事件をモチーフにした映画『タリウム少女の毒殺日記』(2013年)もある。佐世保の少女は、カントが好きだったらしい。絵や作文も上手だった。
九龍 グレアム・ヤングは17年前の酒鬼薔薇聖斗事件のときも、かなり引き合いに出されていた。あの事件の少年Aも絵が上手かったっていうし。
速水 でも、そんな少年少女もたくさんいるんだと思うよ。それが動物虐待までいってしまうまでには大きな開きがある。今回の事件は、家庭環境や学校の問題点がたくさん出てくるけど、親が学校がっていうのを追求しても仕方ない気がするんだよね。10年に一度くらい必ず出てくる対処不可能な異常犯罪案件。一般モデルをたくさん並べて、こういう特殊なモデルに対処しようってのは無理ゲーだと思う。
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