会場の大きな部屋に入っていくと、四方の壁が、目にまぶしい色の数々で埋め尽くされており不意を突かれます。東京・品川にあるキヤノンギャラリーSです。カメラブランドの名を冠していることからもわかるとおり、ここは写真を使った作品を主に展示するギャラリー。風景にしろ人物ポートレートにしても、写真作品というのはたいてい、被写体がよく見えるよう一点ずつ順に横並びになっていることが多いのでは? そう思い込んで足を踏み入れると、あまりのギャップに驚いてしまうのです。
何しろこの展示、壁の左右いっぱい、それに上下も手の届かないところから足元まで、びっしり写真が貼り尽くされているのですよ。どんな写真なのかといえば、これもまたひとことでは言いがたい。ふつうにカメラのほうを向いている子どもの顔もあれば、両手で顔を引っ張ってヘンな顔をした男女も。雄大な山や水辺の景色、手作りっぽい衣装がぽつんとオブジェのように置かれていたりもします。脈絡はなく、神羅万象がここにあるといった感じです。
しかも、写真はときにコラージュされていたり、画面に円形や三角、四角の線が走っていたり。色合いだって自然のままとはとうていいえず、青、赤、黄の原色が強烈に目に飛び込んできます。
高木こずえによる個展「琵琶島」です。高木は大学在学中に公募展「キヤノン写真新世紀」でグランプリを獲得し、以来、精力的に作品を発表し続けています。今回出品している「琵琶島」とは、長野県にある琵琶島遺跡のこと。2年前に高木は、300点ほどの写真をコラージュして、極端に縦長の作品を制作しました。縦長とひと口にいっても、そのスケールは壮大ですよ。何しろ高さは12メートルに及ぶのです。
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