牛込の加寿子荘

牛込の加寿子荘」 第十二回

築40年を超える「加寿子荘」での生活風景。能町みね子の自叙伝風小説! (『少年タケシ』2011年9月更新分より)

どしゃぶりのなか、さんぽ好きのSさんと牛込を歩く、そして、岩戸町の路地のどんづまりの大好きな家を見せに現地まできたところ、前に来たときにはなかった貼り紙を発見した。

若い女の人の手で、若い女の人らしい名前と「引っ越したので郵便物はこちらに」というようなことが書いてある。住所は房総の海のほう。

大好きな加寿子荘を離れる気はないくせに、欲ぶかい私はこのどんづまりの細長くてじめじめした建物もあわよくば住むなり使うなりしてみたいと以前から思っていました。しかしどうしたらいいのかも分からないので、手をこまねいていたのです。

これはとっかかりではないのか。この、なんらかの事情で房総の海のほうにひっこしたIさんなる方に尋ねればこの建物の借り方がわかるのではないか。連絡をとってみるべきではないのか。という機運が、にわかにSさんとわたしのあいだに巻きおこったのは当然のことであった。実際はふたりともテンションが低いので、巻きおこるというかんじではないのですが。

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