出口治明 vol 3. 好きなものを腹落ちするまで深堀りし、そこから広げていく

前回はキケロの言葉を引用しながら、「大人になるということは、本を通じて過去を知ることで人間を理解すること」だと語った、ライフネット生命保険株式会社CEOの出口治明さん。それでは、本を読む人がもっと増えるためにはどうしたらよいのでしょうか。出口さんの見解をお伺いしました。

大人がもっと本を読めば、子供は勝手に本を読むようになる
学生が本を読むためには、採用活動が変わればいい

— 余暇時間の奪い合いなどさまざまな要因で、いま、本を読まない人が増えているようです。この現状をブレイクするにはどうしたらいいとお考えでしょうか。

出口治明会長兼CEO(以下、出口) まず大人が本を読まなければいけないでしょう。大人が本を読めば、それを見て子供が本を読むようになる。若者が本を読まないといいますが、それは、大人が本を読まないからです。経営者が、雑誌の取材などに答える「私の一冊」で、司馬遼太郎とか『論語』—しかも原本ではなくてエピゴーネンの学者が書いた解説書—を挙げているような状況では、まともな本を読む社会は作れませんよ。

— それでは、大人がもっと本を読むには、どうしたらよいのでしょうか。

出口 端的に言えば、採用から変えることです。要するに、極端に言えば、学校の成績だけで採用すればいいのです。あるいは、面談では一切、勉強以外のことを聞かない。世界の一流企業はすべてそうしています。

— なるほど。そうすれば、学生は勉強をがんばりますね。

出口 ほとんどの学生は、いい会社に入りたくて大学に行くわけです。崇高な目的で勉強している人もいますが、ほんの一握り。だから、会社が、即ち、大人の社会が、徹底的に勉強して本を読んだ学生を大事にする、ということになれば、学生は自ずと勉強するようになるわけです。世界中の企業の中で、学生を採用するときに、クラブ活動とかアルバイトの経験とか、そのなかでのリーダーシップとか、こんなことを聞いているのは日本だけだと思います。世界の企業が聞くのは、君はなんでこの大学へ行って、なんでこの学問を選んだのか。そこでなにを勉強してどんな成績をとったのか。

— たしかに。海外の大学・大学院を受けた友人を見ていると、その点を聞かれていますね。

出口 というか、それしか聞いてもらえませんよ。だから、採用を根底から変えて、勉強する学生をつくることが一番の早道だと思います。

— そうすれば、大人が本を読むようになり、必然的に子供も本を読むようになる、と。

出口 だってお父さんがサッカーみてビール飲んでいるのに、子供に勉強せいと言っても、それはありえないでしょう(笑)。

— たしかに(笑)。なんで私だけ、となりますよね。

出口 お父さんが一所懸命本を読んで、おもしろいなぁ、とか、なるほど、と言っていれば、子供はそれを見ていて自然に、なんだかおもしろそうだから私も読んでみよう、と思いますよね。

— 私がこのサイト(ホンシェルジュ)をつくっているのも、おもしろい本は世の中にたくさんあるのに、それに出会えていなくて「本はつまらない」と思い込んでしまっている人がいるのは残念、という考えがあるんです。

出口 それは、すばらしいと思います。みんなが食べていないけど美味い食べ物って、山ほどあるんだから、それだったら知っている人が教えるべきだと思います。

— クチコミ、というか、知っている人が良い本を伝える手段があればいいと。

出口 そうですね。読書は何と言っても古典がいい。多くの人が長い年月の中で選んできたものに悪いものがあるはずがない。僕の知っている若者で、めちゃめちゃ賢いひとがいて、ほんとうにいろいろなことを知っていて賢かったので、「君は大学でどうやって勉強したのか」と聞いてみたんです。

— それは、気になります。

出口 そうしたら、「大学に入った時に、岩波文庫を4年間で500冊読もうという目標を自分で勝手につくって、結果640-650冊読みました」と言っていました。

— すごい。けれど、やろうと思えばできることですね。そして、出口さんが「賢い」というほどの人は、そういう方法でつくられていたのですね。岩波文庫かぁ。

出口 いや別に、違う出版社の本でもいいのでしょうけれど。岩波文庫は一番古典の数が多いですからね。

古典も語彙がたまれば読みやすくなる
語彙をためるには、好きな本を一冊一冊丁寧に読んでいくこと

— すこし本から離れますが、本以外にどのように情報を仕入れているのかを伺いたいです。独自の仮説を築くためには、いろいろな情報を紡ぎ合わせているように思われますので。

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本棚は人を表す、といいます。本連載は、さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人のもつ本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひも解いていこうという試み。本がいまの自分をつくったという人から、ほとんど本を読まない人の本...もっと読む

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