恋の数だけハッピーエンドがある

記憶喪失」の恋

ハーレクイン・ロマンスの作品の中には、「ヒロインが大富豪と幸せな結婚をする物語」だけでなく、かなり奇抜な設定の作品もあります。今回ご紹介する作品は、名前以外の記憶を失ったヒロインが登場!助けてくれた貴族の男性に恋をするも、そのひとには婚約者がいた……。記憶喪失でしか味わえない(?)ロマンスをお楽しみください。

【ハーレクイン豆知識:変わった設定】

ハーレクイン・ロマンスと言えば、「ヒロインがリッチな男性と出会い幸せな結婚をする物語」というイメージが強いと思いますが、3000作以上のハーレクイン作品の中にはかなり変わった設定の作品も!とくに読者の間でも有名なのは『海のレクイエム』。なんと助けた“あざらし”が人間の男性の姿になってヒロインの前に現れるファンタジー作品。かなり奇抜な設定ですが、中身はしっかりとしたロマンス作品になっていますので、気になった方はぜひ読んでみてください。

【作品紹介】

『ふたりのアンと秘密の恋』

「きみの名は?」名門貴族ジェームズ・オルドハーストに尋ねられ、 ベッドに寝かされた娘は必死で答えた。「わたしは、アン……」 嵐の夜、ずぶ濡れで行き倒れになっていたところを彼に拾われたが、 彼女は名前以外のいっさいの記憶を失っていた。 心身ともに弱り果て、不安ばかりが募るなか、 なにくれとなく世話をしてくれるジェームズに、 アンはいつしか特別な想いを寄せていた。 彼は誰もが結婚したいと憧れる魅力的な御曹司。 出自の知れない私なんかとかかわったら、彼の名誉に傷がついてしまう! ひそかに身を引く決意を固め、アンは屋敷から姿を消した……。


だが眠りは、ベッドに横になった娘のところには訪れなかった。彼女はジェームズ・オルドハーストに婚約者がいるという情報にがっかりしていた。無人の荒野も同然の世界で、ジェームズだけが彼女のよりどころであり、安全な避難所だったので、たとえ筋が通らないとしても、彼がだれかと結婚するという考えはどうしても受けいれがたかった。

彼女は目を開けたまま、恩人のことを考えた。ジェームズはわたしに対して優しくしてくれるけれど、もともと辛抱強い性格というわけではなさそうだ。彼は爪の先まで貴族的だし、自信にあふれ、ときおり暴君の一歩手前のような態度を見せることもあった。それでも使用人には愛されているらしい。それに、グレイの瞳には笑みがあった。長身で、たくましくて、髪は黒く、瞳はグレイ、ユーモアのセンスもある。ジェームズ・オルドハーストはとても魅力的な男性だわ。でも……。彼女は自分に言い聞かせた。ジェームズはもうすぐ結婚する身。彼がどんなに魅力的かを考えるのはやめたほうがよさそうだわ。

彼女は気をそらそうと部屋を見まわし、ベッドの向かいにある鏡台に目を留めた。そして自分がどんな外見をしているのか、まったく思いだせないことに気づいて愕然とした。わたしは美人なの?それとも不器量?髪は何色だろう。目の色は?髪をすくって眺めてみると、栗色だった。でも、目は?斜視なのかしら?鼻は曲がっているの?すきっ歯かしら?彼女は鼻を撫でてみて、まっすぐなことにほっとした。舌を歯列に這わせてみると、歯も全部そろっているようだ。残るは目の色だが、そればかりは鏡を見なくてはわからない。

じれったいことに、鏡は手を伸ばしても届かない位置にある。彼女はベッドに身を沈めた。どうせ見ないほうがいいわ。今はとうてい最高の状態とは言えないだろうから。包帯は魅力を増す小道具とは言えないし、目のまわりには黒いあざがあるかもしれない。彼女は横たわり、たっぷり一分間悩んだあと、心を決めた。それでも、あの鏡のところに行かなくちゃ!

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恋の数だけハッピーエンドがある

ハーレクイン・ロマンス

数々の恋愛小説を世に送り出し、女性たちに癒やしを届けてきたハーレクイン・ロマンス。なんと、これまでに出した全ての小説は必ずハッピーエンドを迎えるのだとか。今回はそんなハーレクインの日本上陸35周年を記念して、人気の35作品の見どころを...もっと読む

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