義理」よりも大事なこと

bar bossa店主・林伸次さんの連載、今回のコラムは「義理」についてのお話です。林さんの知り合いの、ある先輩と後輩。先輩は後輩を「恩知らず」と言い、後輩は先輩を「恩着せがましい」と言うそうです。どちらの言い分が正しいのかは当人同士でないとわかりませんが、林さんそれとはちょっと違う考え方を提案します。それは、林さんがかつて修行していたブラジルで学んだことでした。

恩着せがましい人と恩知らずな人

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

職業柄、人と人のトラブルというのをよく見ているのですが、こういうパターンがあります。

渡辺くん(仮)という才能と野心がある将来有望な若者がいます。そして、同じ業界でそこそこ地位や経験のある渋谷さん(仮)という年輩の人がいます。

渡辺くんがまだ駆け出しの頃に、渋谷さんが渡辺くんにいろんな人を紹介してあげたり、いろんなことを教えてあげたりして、ずいぶんと面倒をみてあげました。

その後、才能がある渡辺くんが成功して、渋谷さんが「渡辺くんの成功は俺が面倒みてやったからだ」と思ってるのに、渡辺くんは全然渋谷さんに恩を返そうとしません。それどころか、渡辺くんは渋谷さんを避けているような感じもします。

それである日、渋谷さんが僕にこう言ってきました。「渡辺くんが今の地位にいるのは全部、俺が面倒見てやったからだ。それなのに渡辺くんは全然、感謝しようとしないし、最近はどうやら俺のことを嫌っているみたいだ。あいつはなんて恩知らずな男なんだ」

そこで、僕が間に入って渡辺くんにその件を聞いてみますと、「渋谷さんは僕に色んな人を紹介したり、色んな事を教えたりしたって思ってるのかもしれませんが、当時から結構迷惑だったんです。あの人が教えてくれたことで役にたったものはひとつもありません。それなのにすごく恩着せがましくて、最近は僕から仕事をまわしてもらおうと思って近づいてくるんです。それどころか僕の仕事の関係先にまで『渡辺の恩人だ』って言って近づいてくみたいで。それでもう渋谷さんのことは避けてるんです」ということでした。

うーん、難しいですね。これは実際どちらの言い分が正しいのかよくわかりませんよね。本当は渋谷さんの助言や紹介は効果があったのに、渡辺くんはそれを認めたくなくて、「自分の力でやった」と思いたいだけなのかも知れないです。あるいは渡辺くんの言葉が正しくて、渋谷さんは本当は最初から面倒くさい人間なのかもしれません。なかなかこんがらがってます。

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ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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コメント

Diegopepe33 すんげーわかる。。。大切なのは義務ではなく、その時々の「気持ち」だなと。 約3年前 replyretweetfavorite

godspeedyouko 時々出会う、見返りを求めずにさらっと優しくしてくれる中高年女性たちのことを考えてたから、共通点は何だろう?と思って読んだ。 3年以上前 replyretweetfavorite

irie63u この考え方好き!!ってか、いつも思ってるしやってる!!たまに、割に合わないなと思うこともあるけど、笑顔を見れると嬉しいしね♪ 3年以上前 replyretweetfavorite

SASASAIMON この話でちょっと視界が開けた感覚ある。 3年以上前 replyretweetfavorite