道重さゆみが「最強のアイドル」である理由。

今年4月に引退を表明した、「モーニング娘。’14」のリーダー道重さゆみ。筋金入りのハロヲタである劔樹人さんと相沢直さんが彼女を「最強」とたたえる理由とは? 自伝的コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』を発売した「神聖かまってちゃん」の敏腕マネージャー劔樹人さんと、ラジオやテレビの構成作家として活躍する筋金入りのハロヲタ相沢直さんとのアイドル論対談第5弾!

道重さゆみ最強説

相沢直(以下、相沢) ここでちょっと道重さゆみさんの素晴らしさをわかってほしいので、道重さんのエピソードで一番びっくりしたのを話しておこうかと(笑)。道重さんが「街でファンに声をかけられたときにどう対応するかを後輩に教える」みたいな連載を雑誌でやっていた話なんですけど。

劔樹人(以下、劔) はいはいはい。

相沢 ファンに「一緒に写メを撮ってください」って言われたときには本来撮っちゃいけないから、NOと言わなきゃいけないんですよね、仕事として。それで「どうNOと言うか」について道重さんが出した答えっていうのが本当にすばらしいわけですよ。まず基本的に外出するときは母親と一緒に行動をして、声をかけられたらお母さんが答えるようにしていると。お母さんに「ごめんなさい、事務所の決まりで写真撮影ができないことになっている」と言ってくれとお願いしているわけです。そして、道重さゆみはこう続けるんですけど……。

 長い(笑)。

相沢 お母さんの後ろからちょこっと顔を出して、「ごめんなさい。でも握手だけなら大丈夫なんで握手でもいいですか」と、お母さんが断ったファンの人に言うっていう、ここまでが答えなんですよ! これって誰も損をしないんですよ。ファンにとって本来ゼロだったものが、道重さんは握手してくれた人になるわけです。そんな答えを即座に出すわけです。ということは、そのことに関して日頃から考えているし、それを実行している。僕たちが大喜利出されても絶対に出せないような完璧な答えを彼女はちゃんと出しているわけですよ。そこから努力の量がわかるんですよ。

 同じこと、武藤敬司選手が言ってましたよ(笑)。そっちは付き人でしたけど。やっぱり意識が高いから、お母さんとしか外出しないっていうのも本当だと思うんですよ。

相沢 そうですね。

 ハロー!のアイドルって自分語りはしないし、結果できないで、でも頑張っている、というのが認められないから、できないと駄目なんだっていう部分が強いですよね。だから意識が高くなる。

相沢 とくに道重さんなんか強いですよね。あとは、結果の出し方は人それぞれであっていいという部分もありますよね。けど、何かしらの形で結果は出さないと駄目だっていう。それって、そもそものモーニング娘。のできかたが、5万枚売れなかったらデビューできないっていうところからのスタートだからですよね。なんかしらの課題を超えていくっていう。

 やっぱり、アップフロント(モーニング娘。’14などの所属事務所)は、基本や実力をすごく大事にしてるじゃないですか。ちゃんと生歌を歌わなきゃいけないとか、踊りもちゃんとしないといけないとか。そういう、なんというか……古き良き思想みたいなものがファンにも伝わっているんじゃないかなって感じがする。

相沢 うんうん。

 だからどのアイドルも、飛び道具っぽくないんですよね。

相沢 あと大きいのが、今のモーニング娘。の若い子は、昔のモーニング娘。に憧れて入ってきているっていうことですよね。これって長くモーニング娘。が続いているからであって、他に例があんまりないと思うんですよ。どぅー(工藤遥)なんて、『LOVEマシーン』が出たときに生まれてないですからね。その人がステージに立って『LOVEマシーン』歌ってるんですから、感慨深いですよ。
 今のモーニング娘。’14は、モーニング娘。’14が大好きですしね。かつ負けず嫌いっていうのもすごく感じるし、自分が埋もれないための努力とかをするのも、彼女たち自身がモーニング娘。のヲタだからですよ。それで歴史を超えなければ意味が無いっていう自覚が彼女たち自身にあるし、その超えなければいけない歴史っていうのが自分たちが憧れていた歴史であって……、そこのところが本当に燃えるんですよね。けどね、その良さが伝わらないんですよね……。

 意外とね、伝わらないですよね……。まだ良さに気づいていない人たちをね、なんとかしないといけないってね、思ってますよ。僕は、やっぱり自分語りが強すぎると、逆に演出を感じてしまうんですよね。でも、世の中の大多数の人はそのくらいやってやらないとわからないんですよね、きっと。

相沢 そうかもしれないですね。

 だから道重さんも、もっと自分語りをしてよかったのかもしれないとも思うんですけどね。ラジオで急に泣き出したりとか、テレビで「モーニング娘。を知ってほしくて」って言って泣いたりするっていうのがちょっとあったことで、だんだん周りが彼女がどれだけ頑張ってきたかということに気づいていって、それをファンたちがネットにまとめたものがわりと話題になっていったから、こうやってみんなが知るようになったわけだけど。
 本人としてはそんなに自分語りはしてこなかったわけだから、やっぱりそれってすごくわかりづらいんだろうなとは思うんですよね。けど、自分としてはそのくらいのほうがすごくカッコよく見えるんですよ。けど、Twitterとかで流れてくるような浅い情報から知ってもらうには、やっぱりわかりやすいものが求められてはいるんでしょうけどね。

相沢 でんぱ組.incとかは、「マイナスからのスタート」っていうわかりやすい物語がありますよね。

 あれってすごく演出としては正しいと思うんですよね。ガッと行きやすいっていうね。

相沢 なんというか、頑張っている姿をあんまり見たくないんですよね。あと涙もね。ぎりぎりまで堪えてほしいんですよ。

 それはわかる。

相沢 解散コンサートとかであっても、笑いたいって全員が思っていて、でも泣いてしまうっていうのはしょうがないんですけど。

 泣かせる演出にいってほしくないんですよね。この間、モーニング娘。’14のライブに行ったけど、すごいさらっとしてたじゃないですか。道重さんの卒業発表のあとだったのに。

相沢 僕も行きましたよ! 可能性を感じさせるライブでしたよね。

 道重さんの卒業について多くを語るわけでもないし、「色々サプライズを用意してくれてるみたいだけど、ネットで見てるからバレてるよ」みたいなことを言って、あんまり湿っぽい感じにさせない姿勢をとるとかね。

相沢 さゆ……さゆぅ—!!!

 (笑)。これくらいみんなにも説明できると、道重さんのスタンスの潔さというか男らしさというのはわかってもらえるんですけど。やっぱり伝わりにくいですよね。単純に泣けたりしたほうがね、いいんでしょうかね。

頼まれていないのにやる

相沢 そういえば、音楽業界において武道館でライブをやるっていう価値がすごく下がってませんか? だって、メロン記念日なんて、10年間ずっと「いつか武道館でやるのが夢です」って言い続けていて、最後までできなかったんですよ!

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
アイドルは神であり、孫である!

相沢直 /劔樹人

「神聖かまってちゃん」の敏腕マネージャー、劔樹人さんの初の書籍となる自伝的コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』が、5月24日にイースト・プレスから発売されました。 同書は、2000年代初頭から数年間を過ごしていた大阪市阿倍野区...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

yas4_i ”他を下げることはしたくない”にすごく同意: 4年弱前 replyretweetfavorite

mmrrrrr1 通勤中に読んで熱くなった٩('ω')و 4年弱前 replyretweetfavorite

kensei_akr 道重さゆみさん、本当に凄い(>_<)/!! 「名前を出してハロヲタだって言っている以上、僕らが犯罪を犯したら絶対にハロー!に迷惑かかるから、よっぽどの理由がないと犯罪は犯せないわけですよ 」 https://t.co/uIVN9ZOdiE 4年弱前 replyretweetfavorite

asahi_book 「 名前を出してハロヲタだって言っている以上、僕らが犯罪を犯したら絶対にハロー!に迷惑かかるから、よっぽどの理由がないと犯罪は犯せないわけですよ 」劔樹人 @tsurugimikito /相沢直 @aizawaaa |cakes https://t.co/QEfTx1EXzb 4年弱前 replyretweetfavorite