あの頃。』のハロヲタは今……?

「神聖かまってちゃん」の敏腕マネージャー劔樹人(つるぎ・みきと)さんが、自伝的コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』を発売しました。音楽業界だけでなくさまざまな分野で注目されている劔さんと、ラジオやテレビの構成作家として活躍し、筋金入りのハロプロヲタとしても有名な相沢直さんとの熱い対談が実現。劔さんが過ごしてきた青春と相沢さんの青春、そして2人のアイドル論が入り交じった白熱した内容をお楽しみください。(全6回)

「でも、やるんだよ?」……理由なんてないけど。

つるぎ 樹人 みきと (以下、劔) 初めまして、劔です。

相沢 すなお (以下、相沢) 初めまして、相沢です、と言っても僕はイベントとかに行かせてもらったりしていたので、お顔は何度か拝見しているんですけど。


左:相沢直さん、右:劔樹人さん

 あっ! そのTシャツはメロン記念日の「This is 運命」じゃないですか!

相沢 そうなんですよ。そして実は下にも……、どぅー(工藤遙)Tシャツです。

 じゃあ僕も……、道重さゆみタオルを持ってきたので(笑)。

相沢 さっそくですけど、この劔さんの『あの頃。男子かしまし物語』(以下、『あの頃。』)を読んで思ったのは、劔さんは観察者だなってことなんです。男の墓場プロダクションのメールマガジンも読ませてもらってますけど、すごく細かいことまで覚えているし。だから、おもしろいところをみつけたり、いいところを見つけたりするのが上手い方なんだろうなって思ってましたよ。この本に描かれているのは、西暦でいうと何年くらいのことなんですか?

あの頃。 男子かしまし物語
あの頃。 男子かしまし物語

 2002年の夏くらいにハロー!プロジェクト(以下、ハロー!)に目覚めて、2003年にこの仲間たちと出会ってますので、そこからの話ですね。

相沢 なるほどなるほど。劔さんが早川義夫の『サルビアの花』を真っ暗な部屋の隅で聴いていたところから、友達からもらったアイドルのCD-Rを観て涙するじゃないですか。あれはいいシーンでしたね。

 あのとき僕は、松浦(亜弥)さんの姿を見て、自分を恥ずかしく感じてしまって。日々こんなに落ち込んでてどうするんだっていう。

相沢 恥ずかしいっていう気持ちはよくわかります。『あの頃。』には、なんか根本敬(※1)イズムを感じるんですよね。

※1 雑誌『ガロ』などで活躍した漫画家。エッセイスト、歌謡曲研究家としても活躍。「因果者」「イイ顔」「電波系」「ゴミ屋敷」などといったキーワードを作り出し、日本のサブカルチャーへ大きな影響を与えた。

 「でも、やるんだよ!」(※2)ですか?

※2 根本敬『因果鉄道の旅』における名言。1993年の週刊SPA!上にて流行語大賞をとった。

相沢 そうそう。今日言おうと思っていたんですけど、『あの頃。』って、「でも、やるんだよ!」が「!」ってほど強くなくて「?」マークな感じがして。「でも、やるんだよ!」ってサブカル界で神みたいな言葉になってるし、すごく前向きな言葉に聞こえるけど、でももともとは、そこに理屈はないけどやんなきゃいけないっていう人の話だから、そこはなんか、ちゃんとアイドルを推した人にはわかる感覚なんですよね、たぶん。

 そうですね、たしかに理由なんてあったためしがないですね。

相沢 あややに出会うまではハロー!とかは全然ですか?

 うーんと、とにかく「ASAYAN(テレビ東京)」はすごく観てました。

相沢 オーディション番組時代ですよね。

 ASAYANでモーニング娘。がオーディションをやってたとき、僕は高校3年生だったんですけど、毎日友達と話題にはしてましたね。

相沢 それはデビュー前ですよね?

 そうそうそう。5万枚売らないとデビューできないってことをやってたときで。僕は新潟だったので、観てはいたんですけどリアルタイムじゃなかったんですよ。だから、オーディションの告知とかは必ず「もう募集は終了しました」みたいなテロップが出てて(笑)。

相沢 今みたいにネットも普及してるわけじゃないですからね。

劔 それが高校のときで、それから『LOVEマシーン』が出て、『恋のダンスサイト』とかあの辺の、モーニング娘。が大ブレイクしたときは僕は大学生だったんですけど、そのときはなんとなく「これは音楽的にちょっとカッコイイんじゃないか」っていうのは思ってたんですよ。
 けど、僕はその当時グラビアアイドルがすごく好きで、眞鍋かをりさんだったりとか、優香さんだったりとか、とにかくグラビアアイドルに対する熱がすごくて。「BOMB」とか「Up To Boy」とかグラビア雑誌をいっぱい買っていたし、自分が音楽をやっていることもあって、逆に音楽系のアイドルとかに興味がいかなかったんですよね。で、2002年からあややにハマって、それからモーニング娘。とかにもっていう感じですね。相沢さんはどういう感じなんですか?

相沢 僕は、ずっと<メロン記念日>のヲタだったんですけど、メロン記念日ってハロー!から途中で離れてちょっと特殊な生活を送らざるをえなくなっちゃうから、ハロコン(ハロー!プロジェクトのコンサート)とかは行ってたんですけど、結局そこから離れちゃうと全然情報が入ってこなくて、途中から分からなくなっちゃったりしてましたね。だから、僕は一回ハロ-!を離れてるんですよ。

 なるほどね。僕も途中で一回離れて、最近戻ってきているのでなんかわかります。

相沢 19歳のときに生まれて初めてできた彼女がハロー!が好きで。遠距離恋愛だったので、彼女とMDの交換とかをして「僕はこういう音楽を聴いてる」とか教えあったりしてたんですけど、彼女が送ってきたMDの中に、フラワーカンパニーズとかThe ピーズとかと一緒にメロン記念日の『This is 運命』が入ってたんですよ。

 へぇ。

相沢 そのMDを聞きながら、家から荻窪の駅に向かう坂道を歩いていたら、ちょうど『This is 運命』が流れて、そのサビのところで走りだしていたんですよね~坂道を(笑)。

劔 いい話だなぁ~。

相沢 もうヤバイ!ってなっちゃって。そこからハマったわけです。

 (笑)。

相沢 僕、小中高って男子校だったんですけど。モテるグループとモテないグループに分かれてて。僕はモテないグループだったんですけど、そのモテないグループがアイドルとかを好きになるっていうのが短絡的に思えて、むしろ僕は避けてたんですよ、仮想恋愛的な感じで。まぁ、実際にアイドルを好きになると仮想恋愛ではないっていうのを知るんですけど、当時はそう思ってたので、できるだけ遠ざけてたんですよ。けど、『This is 運命』を聴いて「スゴイ!」ってなってからは、これは自分が知らなかった世界を見れるかもしれないって思ってライブとかに行き始めたんですよ。けど最初に行ったメロン記念日のライブのことは覚えてなくて。

 それはなんで?

相沢 たぶん、まだちょっと斜めから見てたんだと思う。アイドルを好きな俺って逆に面白いかも、みたいな(笑)。今思えば最低ですけど……。

 ありがちですよね。

相沢 けど、やっぱりライブを見たり、曲を聴いていくうちにそんなことも言ってられなくなるくらいハマってて。

 ハハハ。

なんだかんだ、つんく♂がスゴイ!

相沢 劔さんが、あややを好きになったのは『ドッキドキ!LOVEメール』からですか?

 いや、そういうわけではないんですけど、『ドッキドキ!LOVEメール』はけっきょく一番好きなくらいの曲でしたね。

相沢 最後まで?

 相当上位な。

相沢 一位って言わないんだ(笑)。

 一位は……。

相沢 確かに、一位を選べって言われても難しいですよね。

 『オリジナル人生』とか、ああいう曲も好きだったんですけど。いや、やっぱり『ドッキドキ!LOVEメール』が一番好きなのかもしれないな……。

相沢 (笑)。

 バンドで東京に初めて来たときに、下北沢の携帯電話の電波が通じないファミレスってどこだろうって探してみたり。

相沢 『ドッキドキ!LOVEメール』の「あ~あいにくこの店圏外っぽいわ…」ってところですね。

 なんかそういうことはけっこうやってましたね。つんく♂さんの歌詞って、なんていうか日頃使いたくなるパンチラインがけっこういっぱいあるっていうか。

相沢 ありますね。

 <タンポポ>の 『恋をしちゃいました』の、「メールが届きました 「後ろにいます」と 振り返れば あの人が」っていうやつとか。それをやりたいがために、待ち合わせのときに、友達がいるのを確認して……。

相沢 相手は男ですか?

劔 男ですよ、この本に出てくるような人ですよ(笑)。いるのを確認して、そっと後ろにまわるっていうのをやるっていう。

相沢 「後ろにいます」って(笑)。

 「メールが届きました(着いちゃった)」っていうやりとりをよくやってましたね。

相沢 誰かが遅刻したら、「た、隊長!」(『原宿6:00集合』の歌詞)ってやるとか(笑)。

 そうそうそう。

相沢 けっこうリアルな女の子の歌詞っていう感じでしたよね。

 まぁ、全然女の子の気持ちはわからなかったですけどね……。

相沢 (笑)。普通、アイドルって恋愛の曲が多いじゃないですか。それなのに、あややの『オシャレ!』の歌詞って、「やっぱり頼れる人はパパとママよ」というところがあって、すごいリアルだなと思いましたよね。けっきょくは、つんく♂さんってことなんですけど。そういえば、つんく♂さんの歌詞が「エコ」一辺倒になった時期があったじゃないですか。

 流行りがありますからね(笑)。「ごはん」にハマってみたりね。

相沢 「ごはん」がどうのとか、「お米」がどうのとかね(笑)。

 あと「太陽」ブームっていうのもありましたよね。しかし、「エコ」ブームは長いですね。懐かしい名前ですが<エコモニ>(※3)っていうのもありましたよね。

※3 石川梨華・道重さゆみによる特別ユニット。2004年6月に幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で開催された『モーニング娘。“熱っちぃ地球を冷ますんだっ。”文化祭2004 〜STOP!地球温暖化〜』に合わせて結成された。

相沢 今も「エコ」っていうのはハロー!のテーマではありますけどね。けど、あの時期は結構きつかったな(笑)。あと、自分の声入れたがりブームっていうのもありましたよね。

 つんく♂ボイスですね。

相沢 つんく♂さんの方がたくさん歌っちゃってるじゃないかっていうね。結構真似したくなっちゃうんですけど(笑)。

 つんく♂さんの歌詞といえば、今回、この本を作っていく中で感じたのは、この頃にみんなでイベントで歌っていた『恋ing』という曲が、今またハロプロへの熱が戻って来た僕への伏線になっていることが本当によく出来ている話だなと思っていまして。「久しぶりに夢中」っていう歌詞が。偶然なんですけど。

相沢 こういう意味だったのか、と思うときがあるんですよね。

 完全に勝手な解釈なんですけどね(笑)。

相沢 けど、今の俺に向けて作られた曲なんじゃないかって思うことは多いですよ。つんく♂さんは未来から来てるんじゃないかっていう説も出てくるっていう。つんく♂、未来人説(笑)。

 最近のつんく♂さんの世界観って、世界平和みたいな大きな感じになってるじゃないですか。あの感じは今の自分にはとてもグッと来るというか、まぁ時代にも合ってるんでしょうけど。昔は半径5メートルくらいの身近な世界を歌詞にされてましたけど、今はどこまで広がっていくんだっていう感じになってきてますからね。とうとう 時空 とき を超え、 宇宙 そら を超えていってしまって(笑)。

相沢 ちょっと危ないですかね(笑)。

 いやいや、素晴らしいです。

相沢 ところで、『あの頃。』をつんく♂さんは読んでくれているんですか?

 一応、事務所に送ってはいるんですけどね。

相沢 読んでほしいですよね。つんく♂さんは、本当にいい人ですからね。

 だから早く元気になってほしいです。(※4)

※4 つんく♂は2014年 3月 6日に、自身が喉頭がんを患っていることを公表した。

相沢 ほんとですね。あと、もう「お米」方向にはいかなくていいんだよって言いたいですね。

 お米(笑)。

相沢 昔、メロン記念日が「肉体は正直なEROS」をリリースしたとき、「今年のメロン記念日はエロスでいくでー」みたいなことを言ってて、僕らメロン記念日ヲタは戦々恐々としてましたからね。

 そういう思いつきみたいなこと多いですよね(笑)。

相沢 けど、1曲でそれを忘れてくれたみたいで、良かったなと思いましたけど。

 そうそう、忘れるっていうか、無かったことになってたり。

相沢 モーニング娘。の「’14」もそれなのかな?(※5)

※5 「モーニング娘。」は2014年1月1日以降は、「モーニング娘。」の後に西暦を付して「モーニング娘。'14」を正式名称とし、「もーにんぐむすめわんふぉー」などと名乗ることを宣言した。

 (笑)。僕は、モーニング娘。’14のニュースが出たときに、久々につんく♂さんのこの感じきた!って思って嬉しかったですよ。

(次回につづく)

構成:落合美晴

この連載について

アイドルは神であり、孫である!

相沢直 /劔樹人

「神聖かまってちゃん」の敏腕マネージャー、劔樹人さんの初の書籍となる自伝的コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』が、5月24日にイースト・プレスから発売されました。 同書は、2000年代初頭から数年間を過ごしていた大阪市阿倍野区...もっと読む

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コメント

nuttmeg9 あとで読む ■ https://t.co/rPjoY2VyDI 劔樹人 / 相沢直「アイドルは神であり、孫である!」 4年弱前 replyretweetfavorite

tabloid あれ?超見覚えある。大阪のオタさんだっけ 4年弱前 replyretweetfavorite

gulliverdj つんく♂先生のエコへの傾倒やごはんハマり時期の話しで吹いたww「あの頃。」はホントおもしろいから連載スタート嬉しい: #helloproject 4年弱前 replyretweetfavorite

tsurugimikito 相沢さんの名言も連発しますこちらをぜひ! 4年弱前 replyretweetfavorite