前回のコラムで「言葉で表現できる人間になれ」と書きました。「以心伝心」、つまり、「ツーと言えばカー」、夫婦の会話が「あーうー。お——」と痴呆老人の会話のような日本では、「以心伝心」は「美徳」であります。
バーコード禿で足が臭い山田部長の「君、これね、あー、あのね、プロジェクト、あれ、その、完璧?」というお言葉からは
「吉田君、君あのモスクワのプロジェクトの件だけど、バリュープロポジションの計算は3月15日までに終わっていて、先方の顧客の説得は終わっておるのかね? ついでに地元の経済局のルシュチェンコも買収しておけよ。俺、4月の頭に出張行くけどその時に奇麗どころも用意しておいてよ。ああ、ホテルはね、この前と違う所で頼むよ。あと通訳は外大出で美人のナターシャで頼むね。俺さ、家では毎日カミサンに怒鳴られてて息子もぐれてるからロシア行く時ぐらいは楽しくやりたいのよ、でよ、このプロジェクト、お前の次の査定にばっちり響くからさ、毎日朝2時までかかってもちゃんとやれよ」
という「部長が真に意味することを読み取る」という、全盛期のユリ・ゲラー氏も真っ青な読心術が駆使できてこそ、日本では「優秀なサラリーマン」と評価されるわけです。
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