北海道に来ております。蒸し暑さから逃れたいというだけが、目的ではございませんよ。この夏は札幌の各地を会場にして、「札幌国際芸術祭2014」が開かれているのです。
今週ちょうど横浜トリエンナーレも始まったところです。このところ日本では、季節を問わず、芸術祭があちらこちらで開かれていますね。地域のブランドを高めるのに、アートはけっこう効果ありと見込まれているのでしょうね。 横浜トリエンナーレは全国でも先陣を切った老舗であり、毎回、多くの話題と観客動員を誇っております。対して札幌の芸術祭は、この夏が初回。新規参入ということになりますが、人を呼べる催しになりますかどうか。ただしいまは夏の観光シーズン真っ盛りであり、しかも北海道は丸ごと避暑地でもあります。人出はある程度確保できることでしょう。街の夏のにぎわいと、どのように融合できるかがポイントとなりそうですね。
そう考えながら、札幌駅から長く延びる地下道を歩き出すと、なんとそこからもう展示が始まっていました。地下の大通り「チ・カ・ホ」全体を使って、「センシング・ストリームズ」と名付けられたグループ展です。
生活者も観光客も入り乱れる道のそこかしこに、作品が置かれています。一部の人たちは足を留め見入っています。この気軽さはいいものですね。かしこまった顔をして、うんうん唸りながら鑑賞するのがアートであるなどという決まりは、どこにもありませんから。
音楽や身体表現など、ジャンルを超えて作品を制作する山川冬樹は、さまざまなモノを積み重ねたオブジェをスペースに展示しています。これらは石狩湾から舟で川を遡り、札幌へと至る旅をみずからおこない、その過程で拾い集めてきた川岸の残留物だそうです。捨て置かれたモノのかたまりにも、どことなく地域性が滲み出ているようにおもえるのが不思議ですね。
チ・カ・ホ展示「センシング・ストリームズ」、手前は山川冬樹のインスタレーション
地下空間から地上に上がってみると、直線的な道路が前後左右に広がる街のど真ん中でした。札幌の典型的な光景ですね。ですが、なんだか景色の一部に違和感がありますよ。そちらのほうに目をやれば、いきなり巨大な石が、どんと鎮座しています。これがじつは、島袋道浩による作品《一石を投じる》。 札幌から車で二時間くらいの二風谷から、重さ数十トンの自然石を運んできて、ここに設置しました。二風谷は先住民が古くから暮らしを営んでいた地。そこにずっと存在していた石と、明治以降に人工的に造られた街・札幌を出合わせる。先にいた者と後から来た者、自然と人工は、うまくかかわりを持ち調和を保てるのか。ひとつの石の移動が、そんな問いかけをしているようです。 そう、札幌国際芸術祭の全体テーマは、「都市と自然」となっております。まさにテーマに則した発信を、黙したままの石がしているといえますね。