青鬼

第6回 鬼門 ―ジェイルハウス―

杏奈が時折見せる、よどんだまなざしが気になるシュン。いつもなら本人に面と向かって聞くなんてできないはずだが、なぜかこの時は違って――。

実写映画も公開中の、人気ホラーゲーム「青鬼」。人気の火付け役となった小説版『青鬼』の一部を公開します。


 杏奈は転校生のシュンに、いつも優しく接してくれた。自分も恩返しをしなくてはならない。
 そう思うのだが、気持ちとは裏腹に、口は貝のように固く閉ざされてしまう。
「あのさ……」
 今だって、なにひとつ気のきいた台詞が思い浮かばない。焦って鼻の頭をこするが、それで事態が変わるわけでもなかった。
「ん?」
 杏奈が不思議そうに、シュンの顔を覗き込む。こんな近くで彼女を見るのは初めてのことだ。ますます緊張し、頭の中が真っ白になる。
「……あ」
 杏奈のチャームポイントのひとつである目の下の涙袋が、いつもより大きくふくれあがっていることに気がついた。目も少し赤い。
「もしかして……泣いてたの?」
 なにかしゃべらなくてはと焦った結果、不意に口から出た言葉がそれだった。
 杏奈は驚いた表情を見せ、右の小指をまぶたに当てた。
「えへ。わかっちゃった?」
 首をすくめて、おどけたようにいう。
「……なにかあったの?」
「べつに。ほこりが目に入っただけ」
 いつものシュンなら、「ああ、そう」と頷き、黙り込んでいただろう。今日もそうするつもりだった。だが、次に発したひとことは、シュン自身も驚く意外なものだった。
「本当に?」
 杏奈はまばたきを繰り返し、不思議そうにシュンを見返した。
「どういうこと?」
「だって、委員長……ときどき元気がないように見えるから」
 しどろもどろになりながらもしゃべり続ける自分に慌てふためく。

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青鬼

noprops /黒田研二 /鈴羅木かりん

個人制作のフリーゲームでありながら、20万部突破の小説化、AKB48入山杏奈さん主演の実写映画化と、とどまるところを知らない人気を博している「青鬼」。 近日発売が予定されている小説版『青鬼3(仮)』に先立ち、人気の火付け役となった小...もっと読む

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kuroken01 小説版『青鬼』第1作、今なら無料で読めます。 3年以上前 replyretweetfavorite