絶望を笑いに変える芸人たちの生き方

山里亮太のポジション【前編】

2004年の『M-1グランプリ』進出を機に、ブレイクを果たした南海キャンディーズの山里亮太さん。周囲にイジられる“受け身”役を極め、今やお笑い界のビッグネームらに「天才だ」と言わしめる山里さんですが、同期芸人との比較による焦りなどから、「張りぼての自信」のためだけにネタを作り続けた時期がありました。テレビ評ブログで名を馳せるてれびのスキマさんの深イイ芸人評伝『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか』より、本書未収録の山里亮太編をお届けします。

マウントポジション取らせ芸

「笑いの才能がなかったら死んだ方がマシ。笑いの才能だけが飛び抜けている」

 ケンドーコバヤシから人間性を酷評されつつ、芸人として最上級の“賛辞”を送られるのが南海キャンディーズの山里亮太だ。

 一見、山里は嫉妬と自虐でできている、ように見える。

 たとえば、TBSラジオ『山里亮太の不毛な議論』で「狩野英孝さんのやられっぷりの凄さって嫉妬するくらいイイ」と狩野を妬みつつ絶賛した。(12年7月25日放送)

「テレビの尺の中で、この人がメインのゲストでこの人をいっぱい編集とかで使いたいって(スタッフが)思ってる人が生きるために、その人が何しゃべったらいいかとかを、たぶん瞬時に把握して、それを言わせる元のセリフを短めに言って、ツッコミだけをオンエアに残すっていう。
 で、このツッコんだ人が面白いって見えるために自分が編集ではカットされるけども、この人に面白いことを言わせるっていうのができる人なんだなぁ、って。だから長めにバーって振っといて、一回ちょっと間を開けて、あるワードを言う。
 でも、長めに振ることによって、狩野さんってこういうふうに扱ったらいいんだって、他の人たちに教えて。あ、次ああいうことを言ったら『うるさい!』とか『ヤダよ!』とか言おうって頭に気づかせてから、それの元となるボケをポンっと言うのよ。そしたらそのボケ自体はスベってるように見えるかもしれないの。テレビ見てる人には。でも、それが今回みんなが見たいゲストがツッコんだ瞬間にバーってウケるの。で、テレビでは(狩野さんが)スベったのをこの人が助けてあげたって見えるんだけど。いやいや(違う)、と。スベってる感じなのを助けさせてるっていう感じ」(『山里亮太の不毛な議論』12/7/25)

 このように彼のジェラシーはそのまま鋭い批評性と置き換えることができる。

 山里は自虐し自分を下に置きつつ相手を賞賛している。けれど本当は逆だ。その相手への賞賛は実は自らの才能をプレゼンする手段なのだ。

 事実、狩野に向けられた評価は、そのまま山里自身の芸と行動原理の説明にもなっている。

 マキタスポーツは「今の芸人の姿としては、山里さんが一番いい形をとってると思うんだよね。絶対に誰からも馬鹿にされていくというか、わざと下のポジションとっていく“マウントポジション取らせ芸”というか。視聴者含めてみんながツッコミの時代に、圧倒的に正しいですよね。道化師の最新化バージョン」と評している。
 またオードリーの若林正恭も「山里さんはけっこう下に見られるというか、わざと寝技に持ち込んで関節決める」と分析している。(『splash!!(Vol.4)』)

 だからと言って、忘れてはならないのは元々、山里は本業の漫才師として、天才的なツッコミのフレーズを数多く生み出してきた男であるということだ。YouTubeにあがっている「山里名フレーズ集」のような動画を繰り返し見ていた、と若林が告白するほど同業者からも一目置かれる存在である。本来、ツッコミとして“攻め手”であった山里が、ブサイクであることや多くの炎上事件などをイジられる“受け身”の芸に向かったのには何があったのだろうか。

偽りの天才

「山ちゃん、時々おもしろいこと言うからお笑いやってみたら」

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
絶望を笑いに変える芸人たちの生き方

てれびのスキマ(戸部田誠)

2008年の『M-1グランプリ』で敗者復活戦から準優勝に輝き、「ズレ漫才」と春日の強烈なキャラクターで大ブレイクを果たしたオードリー。今やコンビだけでなくピンでも大活躍のふたりですが、結成してからブレイクするまでに8年という長い下積み...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

tnbk_1977 すごく好きな回! @u5u: 【告知】「メルマ旬報」連載の中から新書には未掲載の「” 4年以上前 replyretweetfavorite

u5u 【告知】「メルマ旬報」連載の中から新書には未掲載の「 4年以上前 replyretweetfavorite

unconcon 面白いけど #山里亮太 ( @YAMA414 )の取るポジションは平たく置きにいきやすいポジションでありクリエイティブではない。後編どう落とすのか。 @u5u … #お笑い 4年以上前 replyretweetfavorite

u5u コラムは【オードリー編】前編 https://t.co/FNxAKcN388 後編 https://t.co/OVmqKuJQgJ 【 が公開されています。 4年以上前 replyretweetfavorite