7月18日、資生堂が10月からブランドマネージャー制度を導入するという発表がありました。あわせて、ブランドマーケティングの経験者100人を採用するとのこと。
資生堂が10月からブランドマネージャー制を導入、100人の経験者採用へ
この発表のあった週は、月曜日から資生堂の株価がぐんぐんと上がり始め、水曜日にはついに年初来高値を更新。発表後も株価は安定的に上昇しており、株式市場は資生堂の新組織体制を評価しているように思えます。
ブランドマネージャー制は「コスト効率の悪い仕組み」
しかし、率直に言えば私は、このニュースを聞いて頭の中にいくつもの「?」が浮かびました。ブランドマネージャー制が今の資生堂に必要な仕組みだとは、あまり思えなかったからです。
マーケティングを勉強したことのある人ならご存じだと思いますが、「ブランドマネージャー制度」というのは、それぞれの製品やブランドごとに商品の開発・企画から広告宣伝・販売まですべての責任を負う「ブランドマネージャー」を置き、開発や生産、広告、営業といった社内の機能部門は、それぞれのブランドごとのブランドマネージャーの指示を受けて動く「コストセンター」となる仕組みです。日本では、松下電器の松下幸之助氏が考案したとされる「事業部制」がそれに最も似た制度と言えるでしょう。
ブランドマネージャー制の優れた点は、1つの製品やブランドごとに、顧客が何を求めているか、それをどのように製品のかたちに落とし込み、マーケティングすれば最も良く売れるかを、1つの組織が最初から最後まで収益責任をもって考えなければならないところにあります。つまり、企業内のさまざまな部署に受け渡されるたびに製品やブランドのコンセプトが丸められたり曲解されたりすることなく、ブランドの知覚価値の伝達をしっかりとコントロールできる、というのがその良さです。
一方、収益性の議論が製品やブランド単位で完結してしまうことが多いため、複数のブランドが似たような性能や品質の開発で別々に投資したり、広告の枠の買い付けで社内の他ブランドと競争入札してコストがつり上がったりと、企業全体で見た時のコスト効率は悪化するという弊害も生じます。
成長の見込める市場でトップシェアでないと導入メリットがない
したがって、ブランドマネージャー制の導入は、次のような条件が成り立つ場合にメリットが大きくなります。