米津玄師がいま輝いている3つの理由
総再生数2500万PV! オリコンチャートも席巻!
ニコニコ動画では初音ミクなどを駆使し、若者を中心に圧倒的な支持を受け総再生数2500万PVを超え、2ndアルバムはオリコン初登場2位の新世代クリエイター。
作詞作曲からイラストまでマルチな才能!
作詞、作曲、編曲、歌、演奏、ミックス、さらにはポップな動画や緻密なアートワークまでを全てひとりで仕上げる驚異の23歳!
真に迫る切実なポップロック!
上下に跳ねる独特の旋律と突き抜けるほどポップなアレンジと美しいメロディは耳についたら離れない中毒性あり!
始まるまではどうなることかと思っていた
—— ファーストワンマンライブの成功、おめでとうございます!
米津玄師(以下、米津) ありがとうございます。
—— ライブが終わって、今、率直なお気持ちはいかがでしょう?
米津 やっと終わったな、という感じですね。本当にやりたくなかったので。憂鬱な気持ちがずっとあったんですけど、終わったので……これで好きなことができるな、と(笑)。
—— 実際にステージに立った感想はいかがでしょう?
米津 今まで自分の音楽を聴いてくれる人の顔をまじまじと見たことがなかったので、「こういう人たちが自分の音楽を聴いてくれているんだ」と思いました。「こんな表情をするんだ」とか「こんな服着てるんだな」とか「こんな人生送ってきたんだろうな」って、なんとなくわかったりして。それはすごく意味のあることだと思いました。
「アイネクライネ」
—— ミュージシャンがみな口にする、いわゆる“ライブの快感”は味わえました?
米津 それはめちゃくちゃありました。始まるまではどうなることかと思っていたんですけど、フタを開けてみたらみんな本当に優しくて……。リハーサルでは絶対にやらなかったことをやってしまったりとか。
米津 その……客を煽る、とか。まったく想定していなかったので、自分も驚きました。自然に出ちゃいましたね。
なぜライブを避け続けてきたのか
—— そもそも米津さんは、なぜライブを避け続けてきたのでしょう?
米津 まず、自分がすごく個人主義的な人間で、人と一緒にものを作ることができないんです。ほかの人が「こうすればいいんじゃない?」と言ってくれても、それが自分の感性と違うと「ああ、もういいや。自分でやろう」と思ってしまうんです。
—— だから今までずっと1人で音楽活動を続けてきたんですね。
米津 昔はバンドを組んでいたこともありましたが、うまくいきませんでした。あと、地元の徳島にもライブハウスがあるんですけど、ライブハウスの空気があまり好きじゃなかった(笑)。
—— わかります。ちょっと怖いんですよね。
米津 あと、僕は肉体で再現することを完全に度外視してゴテゴテした曲を作っていたんです。テンポが速すぎたり、腕が3本ないと叩けないドラムだったり(笑)。ライブでの演奏が物理的に不可能な曲が多かった。そういう音楽が気持ちいいと思っているうちに、自分の肉体が置いてけぼりになっていったんですね。
—— 音楽を肉体で再現することが、あまり意味のあることだと思っていなかった?
米津 ええ。音源を作ることが、僕にとっての唯一の音楽活動でしたから。1人で曲を作ることが楽しくて、音楽をやっていたんです。
—— 米津さんは18歳のときに「ハチ」という名でニコニコ動画へボーカロイド楽曲の投稿を始め、またたく間に人気を集めました。ニコニコ動画への投稿のきっかけは何だったのでしょう?
米津 そもそもボーカロイド以前から自分で歌った曲をニコニコ動画へ投稿していたんです。18歳のとき、雑誌の記事でボーカロイドの初音ミクを知って、デモ音源を聴いてみたら違和感がなかったんですよ。すごいなぁ、と思って、初音ミクのソフトは1万5000円ぐらいだったので、これなら自分にも買える、と。すでにニコニコ動画には、初音ミクの曲を投稿して評価し合う、みたいな土壌ができあがっていたんです。
—— ニコニコ動画にボーカロイドのカルチャーが出来上がっていたんですね。
米津 すごく盛り上がっていたし、楽しそうだったから、ここに自分の曲を投稿したら何かリアクションがあるかな、と思って投稿を始めました。
—— 曲を作ること以上に、ニコ動にあったボーカロイドのシーンが楽しかった?
米津 まさしくシーンのために曲を作っている感じはありましたね。
—— 米津さんは曲だけでなく、イラストを描いたり、動画を作ったりもしていますが、それもニコニコ動画で受けるためだったりしますか?
米津 当時は、ただただ楽しいからやっていました。好きで愚直にやり続けていた感じですね。
—— 好きでやっていた結果が、総再生数2500万回というとてつもない数字を叩き出しました。そのときはどんな気持ちでしたか? 「マトリョシカ」も「パンダヒーロー」も本当に多くの人に聴かれていましたよね。
「マトリョシカ」(ハチ名義)
米津 すごくうれしかったし、実際そこまで多くの人が自分の曲を聴いてくれることなんて経験したことがなかったので、まさかこんなことになるとは……と思っていました。 ただ、偉そうに思われるかもしれないですが、一方で、中学生ぐらいの頃から自分が作る音楽にはすごく自信を持っていたんです。すごくいい曲を自分が作れるという自信があった。だから、この数字や人気もある種、当然のことだと思っている自分もいたんですよ。そういう2つの矛盾した気持ちがありましたね。
次回「どうしようもなく自分の意図は誤解される」は、8/12更新予定です。
構成:大山くまお
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