第3回】医師・企業オーナー・地主──二極化進むオールドリッチ

日本における金持ちの代名詞と言えば、医師と地主、そして企業オーナーだ。だが最近になって、彼ら伝統的な富裕層が勝ち組と負け組に分断され、格差が広がる“異変”が生じている。

 並み居る国家資格取得者の中で、最もカネを生むとされるのが医師。だが、近年の美容整形とアンチエイジングブームが、彼らに亀裂を生じさせている。

 「一昔前、美容皮膚科に移るのは、皮膚科医と相場が決まっていたが、近年、内科医など他の診療科の医師さえも流れ込んでいる」

 医師限定の会員制コミュニティサイトを運営するメドピア社長、石見陽医師は、美容整形やレーシックといった自由診療(保険外診療)の道を選ぶ医師が2000年代に入り、増えていると明かす。

 背景にあるのは、勤務医の待遇格差に加え、拘束時間の長さといった生活の質の格差だ。

 医師全体の平均年収は、勤務医で1479万円、開業医で2530万円(厚生労働省)だ。世間一般から見れば、十分に高額であることは間違いない。だが、自由診療の道を選んだ医師の収入は、この比ではない。

 例えば、生き死にに無関係な顔のしわやたるみ取りなどを行う美容皮膚科医の場合、「一定の技術レベルを持つ経験者ならば、年収2000万円は堅い」(医療関係者)。レーシック手術に従事する勤務医はさらに高額で、開業医の平均さえも超える年収3000万円以上が相場とされる。

 「医師のサラリーマン化が進み、今の医学生の意識は、昔とまったく違う。優秀な医学生でさえ、医療の質ではなく、余暇や報酬などQOL(生活の質)で研修先を選んでいる」と石見医師は嘆く。

 勤務時間9~17時とOLに近い生活を送り、ストレスも少ない上に高い収入……。自由診療に医師が流れる現状に、別の内科医は言葉に怒気を込める。

 「昔から、外科医や内科医など人命を左右する診療科ほど、拘束時間が長い上に給料も安い。美容整形外科などに流れた連中が逮捕されたりすると『ざまあみろ』と思ってしまう」──。

現金乏しい企業経営者
富裕層はわずか1割?

 医師以上に二極化が進むのは、長引く不況に喘ぐ企業オーナーだ。

 財産コンサルティングを手がける青山財産ネットワークスの蓮見正純社長は「日本経済が右肩上がりだった1990年ごろまでは、多くの企業が成長過程にあった。しかし、2000年代以降は一変した」と話す。

 商品のライフサイクルが加速度的に短くなる昨今、多くの中小企業がニーズの変化に取り残され、厳しい経営を余儀なくされているからだという。

 「現在の企業には『2:6:2の法則』が当てはまる。うまくいっているのは上位2割で、6割が現状維持、残る下位2割は極めて厳しい状況に陥っている。特に中小企業オーナーで、富裕層と呼べるのは1割程度だ」と蓮見社長。

 上位と下位の格差はさらに広がりそうだ。消費税が増税され、経営不振に陥った企業を支援する中小企業金融円滑化法も期限切れが迫る。となれば企業倒産の激増は避けられない。蓮見社長は「状況によっては、事業を畳む勇気も必要」とまで言う。

 そもそも、企業オーナーの保有する資産の大半は自社株。株式市場が低迷する中、株式の新規公開(IPO)も難しい。以前と比べて、IPO長者が減り、キャッシュリッチな企業オーナーは大幅に減っているという。

 とはいえ、企業オーナーは地主と比較すれば、まだキャッシュに恵まれているといえる。

 「不動産オーナーへの運用アドバイスはこの10年間で、『土地を有効活用しましょう』から『活用は難しい』になり、最近は『売却もできません』に変わった」と不動産ビジネスに詳しい会社社長は言う。

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