BAPA展直前 両校長緊急対談—朴正義(バスキュール)×伊藤直樹(PARTY)【前編】

デザインとプログラミング、両方を理解できる人を育てる、次世代のクリエイターのための学校「BAPA(バパ)」。第一期生の卒業制作展の開催を7月26・27日にひかえ、校長であるバスキュールの朴正義さんとPARTYの伊藤直樹さんがこれまでのBAPAの活動について振り返りました。二人がBAPAを始める前に抱いていた目論見は、かたちになったのでしょうか。

BAPAはいま、世の中に求められている

— BAPAを始めて、予想外だったことはありますか?


朴正義(ぼく・まさよし/バスキュール代表)
1967年、東京生まれ。言語や世代を超え、多くの人に楽しんでもらえるインタラクティブコンテンツを生み出すことを目標に、2000年にバスキュールを設立。エンターテイメント性の高いウェブサイト制作やインタラクティブコンテンツで、カンヌ国際広告賞、ニューヨークADC賞、東京インタラクティブ・アド・アワード ベストクリエイター賞など受賞歴多数。

朴正義(以下、朴) 最初にサイトとFacebookページをたちあげたら、すごい勢いで「いいね!」がついてびっくりしました。


伊藤直樹(いとう・なおき/PARTY代表)
1971年、静岡県生まれ。W+K Tokyo(ワイデンアンドケネディ トウキョウ)代表などの経験を経て、2011年にPARTYを設立。「経験の記憶」をよりどころにした、身体性や体験を伴うコミュニケーションのデザインは大きな話題を呼び、国際的にも高い評価を得ている。国内外の200以上に及ぶデザイン賞、広告賞を受賞。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。
【主な作品】LOVE DISTANCE(相模ゴム工業)MUJI to GO 世界キャンペーン(無印良品)

伊藤直樹(以下、伊藤) そこですか(笑)。

 バスキュールのフェイスブックページのいいね数を瞬殺で越えてしまって。だから、PARTYはすごいなあ、と思ったんですよね。

伊藤 いやいや、PARTYじゃなくてBAPAへの注目ですよ(笑)。

 でも、いいね数は表面的な話に思えるかもしれないけど、そもそもうちだけでは実現できない学校だったことの証明であるのは事実で、PARTYと一緒にやれてよかったです。こんなに注目してもらえるんだと。先日white-screen.jpに載った人材育成についての記事もたくさんの人に読んでいただいたそうなんですけど、BAPAのような試みはいま、強く求められているんだと思います。

伊藤 確かに説明会の時に、それを特に感じましたね。慶應大学の日吉キャンパスで開催したんですが、その日は土砂降りで、誰も来ないんじゃないかと心配していたんです。でも、フタを開けてみれば満席で、参加者の目がすごく真剣だったんです。「こういうことをやりたい、でもどこで教えてくれるのかわからない」という、行き場のない気持ちをふつふつと抱えていた若い人が、それだけたくさんいたということですよね。

 たしかに、あのときのパワーはすごかったですね。

伊藤 実際、生徒もすごく熱心ですよ。情熱があふれていて、みんなとにかくまじめに出席してる。そんな学校ってあまりないですよね。僕は大学で教えたりもしていますが、やっぱり休む人は必ずいます。BAPAの出席率がほぼいつも100%だったんですよね。

 講師陣も、毎回の授業にすごく力を入れてくれていますからね。どの授業も休んだらもったいない密度とエネルギーは発していたかと思います。

伊藤 BAPAでは、グループで「Fantastic!SHIBUYA」というテーマで卒業制作をつくるという課題を出しました。グループワークでものをつくるって、脱落者が出やすいんですよ。なぜなら、必ず自分のアイデアが採用されない人が出てくるから。僕は大学のときに映画の学校に行っていて、グループで映画を撮るとなったときに、自分の脚本が採用されなかった時点でやる気をなくしました(笑)。でもそれって当たり前の心理ですよね。

 そうですね。

伊藤 だから僕は、もうちょっと脱落者が出ると思ってたんです。でもけっこうみんな食らいついてがんばってますよね。そこは意外でした。もっと「やりたくない」という人が出てくるかと思ったんです。

グループワークの効用があちこちに出てきている

 みんな、本当に仲がいいですよね。同志感がある。これ、なぜだと思います?

伊藤 朴さんも自分も、入学式の段階で「グループワークで成果を出すことが大事だ」という話をけっこうしたからかもしれませんね。普段の我々の仕事も、実際はグループワークですから。自分のアイデアが毎回採用されるわけではありません。誰かのアイデアをみんなで磨いて、いい作品に仕上げていくことが求められます。

 「君たちは第一期生なんだ」ということも言いましたしね。土日、ずっと一緒にいて作品をつくっているチームもいるみたいですよ。グループワークによる波及効果は大きいと感じます。バスキュールの若手が一人、BAPAの生徒なんですけど、彼なんかはすごくBAPAのおかげで頼もしくなりました。社内だとどうしても、経験が浅いこともあって、チームをまとめる立場になることはないんですよね。その彼が、BAPAではリーダーの自覚をもって動いているんですよ。すごく成長しています。

伊藤 うちの社員も二人参加していますが、本業よりがんばってるくらいですよ(笑)。卒業制作をつくるためにけっこう徹夜してるみたいです。彼もやっぱりリーダー的な役割を負っていて、会社とは違う経験がつめているのではないでしょうか。

 うちのスタッフからも「普段、先輩から言われていることの意味がわかるようになりました」という発言があり、本当に良かったなと思いました。どうしても、日常の成長を追えるのは自社のスタッフだけなので彼の話をしましたが、こういう効果がほかの生徒にも出ているのであればいいですよね。作品には表れない部分かもしれないけれど、互いの力を引き出しあう経験ができるのが、グループワークならではのメリットだと思います。

伊藤 たしかに。

 一方で、みんな人柄が良くて仲良しだから、アイデアをぶつけ合わないままここまで来てしまった、という面もありますね。

伊藤 みんな、まじめですよね。それが、脱落者が少ないことにもつながってるんですけど。

— 講義とワークショップ(卒業制作)を並行するという形式については、どうでしたか?

伊藤 「ユーザーエクスペリエンス」「テクニカルディレクション」「アートディレクション」……と10の講義で作品制作のプロセスを追えるようになっていて、学んだことを制作に活かす流れができていたのではないでしょうか。けっこううまくはまったな、と思いました。

 そうですね。大筋の流れは良かったと思います。

— 始業式でおっしゃっていた「バパイズム」のようなものは、生徒に宿りつつあると思いますか?

伊藤 そう思います。BAPA(Both Art and Programming Academy)はデザインもプログラミングもできる人を育てようというコンセプトで始まりました。実際、エンジニア、デザイナー、プランナーなど、さまざまな職種の生徒が集まっています。デザイナーじゃない人は「おれ、全然デザインできない。デザイナーはやっぱすげえ!」って思っているし、エンジニアじゃない人は「エンジニアって、こんなにコードが書けて天才じゃないか」と思っているように見えます。みんな、自分の能力不足を痛感しているでしょう。そこから起こる刺激を感じてもらえれば、大成功です。

 そうですね。

伊藤 僕らは一から十まで手取り足取り教えてあげることはできない。できることといえば、触発される環境をつくってあげることくらいなんです。そういう意味では「もっとデザインできるようになりたい」「コードがかけるとこんなこともできるのか」と思うだけでもいいと思っています。そのなかで、もがいて、悩むことが大事。で、実際生徒を見ていると、みんなうんうん悩んでるんですよ。そこが良かったなと思います。

 会社にもデザイナーやエンジニア、さまざまな職種の人がいます。でも、案件ごとに自分の思いをぶつけあったりはしない。すると、自分と職能の違う人が何を大事に思って行動しているのかわからないままなんです。わからないと、様子をみるばかりで意見も言い切れない。同じ立場で話し合って、自分と違う職種の人の「琴線」がわかるようになると、その壁を超えることもできるようになります。きっと同じメンバーでもう一度作品をつくることになったら、もっとうまくやれるでしょうね。


(後編、7月25日公開予定)

構成・写真 崎谷実穂


BAPA一期生卒業制作の展示「BAPA展」が、いよいよ7月26日(土)27日(日)の2日間で開催されます! ぜひBAPA第一期生が生み出した「Fantastic! SHIBUYA」を目撃してください。

BAPA展
会 期: 2014年7月26日(土) - 2014年7月27日(日)
時 間: 7/26 14:00-21:00   7/27 11:00-17:00
場 所: 渋谷ヒカリエ8F、COURTCOURT

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教えて、バパ。

BAPA

デザインとプログラミング。両方のスキルを兼ね備える、次世代型スーパークリエイターの育成を目指す学校ができました。“Both Art and Programming Academy”、その名もBAPA(バパ)! デザインや広告などのクリ...もっと読む

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bapa_ac 【cakes連載記事:BAPA展 直前 両校長緊急対談】 脱落者が出ると思ってたんです。でもけっこうみんな食らいついてがんばってます。(なぜ?その理由は。。。) B 約4年前 replyretweetfavorite