いまや大企業は「ハイリスク・ローリターン」?
チャレンジするには勇気がいる。だが、さまざまな技術的基盤や社会的基盤が整った現在では、ひとむかし前にくらべると、挑戦へのハードルは格段に低くなっている。
以前、前出のセールスフォース・ドットコムのベニオフ氏と話した際、彼は、「起業はノーリスクだ」と言いきっていた。セースルフォース・ドットコムは、オラクルから独立した彼が創業し、ビジネス系アプリケーションをクラウドで提供している世界的なIT企業だ。
そのトップが断言するほどに、じつは起業そのもののハードルは低い。シリコンバレーの起業家の一人としての彼の発言には説得力がある。彼はまた日本の起業環境について、「日本では起業家たちが高い評価を受けていない」とも語っていることは、本連載の「『捨てる』ことが苦手な日本人」で述べたとおりである。
従来、日本人には「寄らば大樹の陰」という発想が強かった。公務員になったり、大企業に入ってサラリーマンとなれば、雇用は保障され、定年まで勤め上げれば日々の生活や老後にも困らないだけのお金は得られる。社会的な評価もそれなりに高い。ハイリスク・ハイリターンの起業家とは違って、ローリターンではあるがローリスクの人生が送れる。だから公務員や大企業の人気はいまだに高い。
しかし、少なくとも大企業に勤めることがローリスク・ローリターンな時代はとっくに過去のものとなっている。変化の激しい時代にあっては、動きの遅い大企業にいることは、むしろ「ハイリスク・ローリターン」になりつつあるともいえる。
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