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昨日、晩ごはんを食べながら、妻とこんな会話をしました。
「死んだら、どこに行くと思う?」
「私は何の宗教も信仰していない。だから、死んで灰になれば消えてなくなると思ってるよ」
そう言う妻に、私はさらに絡みました。
ええ感じのワインを飲んでいたので、なんかおしゃれインテリ気分になっていたのです。
「それってつまり、あなたは唯物論を信仰してるってことなんじゃないの?『人間の体は細胞というモノからできていて、モノがなくなってしまえば自分も消える』っていうことでしょ。言ってみればあなたは、科学の信者なんじゃないの」
「いや、でも、科学は宗教じゃないよ」
「宗教という言葉を『世界の説明の仕方』という意味でとらえれば、科学もある意味宗教よ」
よく知らないけどええ感じのワインを片手にドヤッとする私を、妻はまっすぐ見つめてこう言いました。
「じゃああなたは何を信じてるの?」
「私は……私には、何も信じられない。だから死んだらどうなるかわからないし、そもそも自分が生きているのかどうかもわからない。すべてが幻想なのかも」
このへんでちょっと、自分で自分がイヤになってきたので、語りモードから口説きモードに転換しました。ええ感じのワインも持っていることですし。
「すべてが幻想なのかもしれない、ただ、自分が何を感じているのかはわかるのよ。わかるといっても理解しているという意味じゃなくて、シンプルに、五感を通して、感じているの。私、あなたのことが……」
「うん! カレーおかわりしてくるね!(^▽^)」
妻は元気に台所へ行ってしまいました。
負けです。
科学を信じていようがいなかろうが、私たちはカレーなり点滴なり、とりあえず何かを摂取して生きています。
現代日本社会には、科学狂信に陥っている人が多いのではないでしょうか。
妻がカレー食べてる姿が超可愛くて昨日あまり語れなかったので、今日ここで「科学を信じる時に忘れてはいけないこと」を語りたいと思います。ワインは飲んでないので許してください。
科学とはつまり、「物事を区別し、分類し、関係性を調べる」営みです。
空の星に名前を付けるのは、その星を“その星でないもの(別の星、空間など)”から区別し、似たような特徴を持つ星々と同列に分類し、ひいてはその他の事象とどういう関係性を持っているか調べたいからですね。
ところが、そもそも区別・分類ということ自体、人間の知覚と人間が使う言葉というツールを通した人間の都合にすぎません。今あなたの頭の上にある星は、言ってみれば宇宙の一部であるとも、またあなた自身を含めた“すべて”の一部であるとも言えます。
突き詰めれば人間は、人間の知覚と言葉を通してしか世界をとらえることができません。それでも世界は人間の知りえないところまで含めて、言葉にならない“すべて”として在るのです。
そのことを忘れ、世界のなにもかもがきっちりきれいに区別・分類できると信じてしまうのは、つまり科学狂信に陥るということです。そしてそういう人は、セクシュアリティのことにおいても、他人を「本物のバイセクシャルじゃない」とか「お前は本当はノンケだ」だとか上から目線で区別・分類してしまいかねないわけですね。ええ感じのワインなんか片手に。
でも、そもそも「本物のバイセクシャル」ってなんなんでしょう?
今回ご投稿くださった方も、そうやって自分が外から区別・分類されているような感覚にとまどっていらっしゃるのだと思います。ご紹介しますね。
バイセクシャルを自認しているのですが、実際に同性との経験がないので、どう自称すればいいのか分からないでいます。
周りにいるクィア(※1)の友だちや、アライ(※2)の友達に「たぶんバイセクシャルだ」と言ったこともあるのですが、なんだかこころなしか(嘘つけ……)というような反応をされたような…。
やっぱり実際に経験ができるまで胸にしまっておくべきなのでしょうか??
※1クィア:“性のあり方がいわゆる普通じゃない人”。転じて、主に性愛における『普通』を疑う態度。多くの場合、社会通念上普通でないとされる者がポジティブに自称する。英語の『ヘンタイ(queer)』に由来。
※2アライ:“性のあり方がいわゆる普通じゃない人、の理解者”。多くの場合、自分の性別に違和感がない異性愛者が、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の権利運動に加わる際に使われる。英語の『仲間(ally)』に由来。
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