—— 若林さんは文章にも定評がありますが、お二人とも文章を書かれる方としてどう思われますか?
能町 客観的なんだけど、客観的になろうと努力している感じも見える。そこに自意識が漏れているというか。そのへんのバランスがいいんですかね。正直そんなにこなれてはいないんですけど、文体にまで本人の感じが出てるみたいな……。文体もちょっとおどおどしてるんですよ。そこがいいと思うんですけど。
スキマ ははは!
能町 あんまり座って書いてない感じがするんですよ。
スキマ なるほど(笑)。僕は自分自身文章がうまくないんで、文章論はわからないですけど、読んで余韻が残るじゃないですか。その残し方がすごいうまいなって。若林さんのエッセイ集『人見知り大学社会人学部卒業見込』(メディアファクトリー、2013年)の「大丈夫だよ」という章とか大好きです。
能町 あ、覚えてないかも。復習しないと。
スキマ (自分でまとめたオードリー発言集を取り出し)ええとね、売れない頃に近所の人にエクレアをもらって「大丈夫だよ」って言われたエピソードを綴って、「大丈夫と言うことから大丈夫は始まるのだ」っていう。
能町 ああ、思い出しました! ……この資料すごいですね。
スキマ これは『有吉弘行のフォロワーはなぜ300万人もいるのか』の連載を書くときにつくった資料に最近のものを少し足したもので、毎回だいたいこういうものを作ります。ブログ「どろだんご日記」の文章にもいいのがたくさんあるんですけど、すでに削除されているので、入れようかどうしようか迷ってやめました。
能町 これいいな。ラジオでの発言で「オードリーは強いよ、時の人となることを本当に信じてないからね」っていうの。すごくいいですね。
スキマ これ本当にいいんですよ。オードリー的ですよね。
能町 うん、オードリー的ですよね。素人っぽいっていう意味では、タモリさんの好きな部分とも少し通じてて。私、タモリさんも永遠の素人だと思ってるんです。これ確か爆笑問題の田中(裕二)さんが言ってたんですけど、「いまだに『笑っていいとも!』の司会で照れてる」って。
スキマ はいはい(笑)。ずっと変わらない。
能町 テレビの主役みたいになることにものすごい照れがある。たぶん、二人とも「俺なんかが」って思いながらこのままずっと行くと思う。
スキマ そうですね。タモリさんも絶対にプロになろうとせずにアマチュアリズムに徹してましたよね。
能町 それがタモリさんとか、私の好きな芸人さんに通じるところです。有吉さんもそうですね。ヒッチハイク後のブームについても「こんなのすぐ終わると思ってた」って最初から達観して、「でも流れに乗るしかないからしょうがない」って本当にあきらめていた感じ。
スキマ 僕の本にも引用しましたけど有吉さんは「すべての人に嫌われてるもんだ」って思ってやってる、とか「僕は最低の人間ですよ!」って部分は絶対に捨てないって言ってますもんね。
テレビで売れるというのは、そういうこと
—— 若林さんの話が多くなりましたが、やはりあくまでもコンビのファンなんですよね?
能町 どっちのファンか絶対に選べって言われたら若林さんになると思うんですけど、もし仮に春日さんが全然出なくなって、ツービートみたいになって若林さんだけが出たとしたら、それはもう私は全然ファンじゃなくなっちゃうと思うんですよ。
スキマ うん。
能町 ダウンタウンが、松ちゃんが何か言うのに対して浜ちゃんがツッコんでくれないといけないみたいな感じで、若林さんのあのややこしさみたいなものを数十年受け止めてきた春日さんが隣にいないと若林さんが全力出せない気がしちゃうんですよね。
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