メトロポリタン美術館といえば米国の、いえ世界を代表しリードする美術館のひとつ。各ジャンルに一級品を揃える同館ですが、なかでも1906年の創設で、約3万点のコレクションを擁するエジプト部門の充実ぶりは目を見張ります。
そんな「大メトロポリタン」から古代エジプトの美術品を選りすぐって運んできた展示が、「メトロポリタン美術館古代エジプト展 女王と女神」です。会場は東京上野の東京都美術館。この目と鼻の先には東京国立博物館がありまして、現在「台北故宮博物院‐神品至宝‐」展が開催されています。こちらも負けず劣らぬ世界的美術館。世界屈指の館が揃って出張してきてくれているのです、今夏の上野はすごいことになっておりますよ。
3万点を数えるメトロポリタンのエジプト・コレクションですから、何か基準がなければ展示のしようもありません。今回は、「女性」という切り口で約200点が集められました。
会場に入ると、ハトシェプスト女王の像や関連の品がまずは目に入ります。夫のトトメス2世が亡くなると、徐々に実権を握ってファラオの座に就いた強き女王です。女王像を見ると、妖艶かつ聡明そうな表情を湛えています。勝手ながら、相当のやり手であっただろうことが想像されます。
新王国時代第18王朝というのがハトシェプスト女王とその子トトメス3世の治世。女性が世を治めていたことが関係するのかどうか、「美」に対する意識が高い時代だったようです。当時の儀式道具のひとつだったと見られる《二枚貝形の石》が展示されており、小さくてシンプルなものながら、何とも洗練されたデザイン性を有しています。
《二枚貝形の石》新王国時代、第18王朝、前1473-前1458年頃
古代エジプトでは、女神信仰も盛んでした。天空の女神ハトホルは、厚い信仰の対象でした。展示室の一角に、ハトホルの像や関連品が集められているのですが、どれも顔の造作がかなり共通しています。古代エジプトの人々にとっては、おなじみの姿だったのでしょうね。《ネクタネボ1世の名が記された、四面にハトホル女神のある小柱》などを見ると、女神とはいえ、けっこう親しみやすくて人間味あふれる顔つきになっておりますよ。
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