演繹的」に考える

サッカー日本代表の本田圭佑選手、ソニー創業者の盛田昭夫氏、坂本龍馬の共通点。それは「演繹的に考えて行動する」ということです。
世界を舞台にビジネスする上でも欠かせない、この行動スタイル。身につけるには、いったいどうすればよいのでしょうか。

PHPビジネス新書『成功体験はいらない』より、一部を公開します。

「日本をサッカー強国にする」と決意した瞬間、すべてが動き出した

 変わるためにはまず「決意する」ことが重要だ。だが、この「決意する」とはどういうことなのであろうか。
 決意するとは、言い方を換えれば「演繹えんえき的に考える」ということである。将来のあるべき姿を思い描き、そこから逆算して、いますべきことを決める。
 近年、アスリートの世界では日本人選手の活躍が目立つ。サッカーでも年々、日本人選手の国際的存在感が高まってきている。
 ワールドカップへの出場も常連となり、二〇一四年のワールドカップにも早々と出場を決めた。また、サッカーの本場・欧州では数々の日本人選手が活躍し、マンチェスター・ユナイテッドやインテル、ACミランといったビッグクラブのメンバーにも、日本人選手が名前を連ねている。
 だが、いまから二十年ほど前には今日の状況は予測すらできなかった。一九九三年、まだ国内でプロリーグができたばかりで、ワールドカップには出場経験すらなかった。欧州で活躍する選手など皆無。そんなサッカー後進国であった日本は、なぜこれほどまでに強くなれたのだろうか。
 それは、「二十年後、三十年後に日本をサッカー強国にする」と、当時、誰かが決意したからにほかならない。
 「演繹的に考える」とは、将来のあるべき姿を思い描き、そこから逆算して、いますべきことを決めることだ、と述べた。
 二十年前、Jリーグの初代チェアマンに就任した川淵三郎氏を中心とした人たちが、「日本をサッカー強国にする」と決意した。そして、その瞬間から、十年後、二十年後を見据えた取り組みをスタートさせた。
 まず、Jリーグを組織化し、その下にも、ユースチームやジュニアユースチームをつくり、年少時から才能ある選手を発掘して育成するシステムを整えた。最近、海外で活躍する若い選手が増えたのは、こうした育成システムが機能して人材が育ったからこそだろう。
 また、トルシエ氏やオシム氏、ザッケローニ氏といった豊富な指導経験をもつ監督を海外から招き、世界レベルの戦略や戦術をチームに根づかせるとともに、国際試合の数を増やしていった。その結果、アジア予選すら勝ち抜けなかった日本代表は、ワールドカップ常連国へと成長した。
 地域密着型のJリーグは、あらゆる地域の人がサッカーに関心をもつ土台をつくりあげた。その結果、日本全国にJリーグ入りをめざすチームが続々と誕生し、サッカーの裾野は驚くほど広がった。
 これらはすべて、川淵氏たちの演繹思考から始まっている。それがなければ、おそらく日本のサッカーの実力は二十年前とさして変わることはなかっただろう。
 このように決意から具体的な行動を起こして結果を出すのは、簡単なことではないし、時間もかかる。サッカーは一つの成功事例といえるだろうが、日本のさまざまな分野において、「二十年後、三十年後に、こういう状態にする」と明確なビジョンを打ち立て、その具現化を決意し、いますぐに行動を開始することが求められていると思う。そうしないと、結局、現状と何も変わらないか、現状よりもさらに悪い状態を招いてしまうことになるだろう。

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辻野晃一郎

グーグル、アップル、アマゾン。圧倒的な意思決定のスピードはどこから生まれてくるのか? ソニーを経てグーグル日本法人社長を務めた著者は、「しがらみを捨てると世界の変化が見える」と指摘します。 新しいビジネスルールの見取り図と、そこで生き...もっと読む

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