【ハーレクイン豆知識:アルコール】
ハーレクイン作品には、愛を語らう時の必須アイテムとしてアルコールは非常に良く登場します。ここで、お酒を飲むときの最高の口説き文句をどうぞ。 「きみがワイン三杯にカクテルを一杯飲んだときはだめだよ。大切なひとときを何一つ忘れないでほしいから。ぼくも忘れないよ、ハニー、本当だ」(『月影に寄せられて』)
【作品紹介】
いわれなき噂を立てられ、社交界を追われたリディア。 ある夜、張り込みの記者につかまり、 はずみで足首を怪我したところを、放蕩子爵エイドリアンに助けられた。 今までつらい目ばかりを見てきたリディアは、 彼の優しさに触れ、たくましい胸に思わず飛びこんでしまう。 それは、女としての悦びを初めて教えられた一夜だった。 また彼と会いたい……でも、これ以上噂の的になるわけにはいかない。 そう思った彼女は、心を鬼にしてエイドリアンを追い返した。 まさかその後、彼の子を身ごもったことを暴く記事が、 新聞紙上に躍ることになるなど夢にも思わずに。
頭がぼうっとしている。ワインとブランデーのせいだ。こんなに飲んだのは、ずっと前にマダム・ビズーの店で失態を演じて以来だ。たぶん明日になれば、リディアの率直な誘いをもっと慎重に考えるべきだったと思うのだろう。だが、彼女は美しく、魅力的で、しかもその気になっている。
彼女の目に浮かぶ切望には、あの初めてのときと同じように今もまた抗いようがなかった。しかし、その美しいサファイア色には、何カ月も前の絶望はもう映っていない。ぼくが彼女のあらゆる問題を軽くしてやったのだ。褒美をもらってもいいのではないだろうか?
エイドリアンはふたりのあいだのテーブル越しに手を伸ばし、ショールを引きはがした。リディアがあえいだが、それは恥ずかしさではなく興奮からだ。
胸があらわになると、乳飲み子を持つ母親の胸は大きくふくらんでいた。自分の息子がそのひとつに吸いつき、小さな指でふくらみをぎゅっと握りしめている。子供に献身する母親の姿は感動的だった。胸の先からぽろりとはずれた息子の唇が、それでもまだ吸っているかのように動き続けるのを、エイドリアンは驚きをもって見つめた。
リディアが彼を見上げてほほえんだ。
「揺りかごに寝かせるわ」
彼女は立ち上がると、しばらくのあいだ赤ん坊を肩にもたせかけるようにして抱き、背中を軽くたたいて、驚くほど大きなげっぷを出させた。 エイドリアンは彼女のあとについて揺りかごのところへ行った。
「どれくらい眠るんだい?」
赤ん坊がエイドリアンのほうに顔を向けた。
「この子はあなたの声が好きなのね」
リディアはほほえんだ。
「抱いてみたい?」
「ぼくが?」
エイドリアンは後ずさりした。 リディアが赤ん坊を差し出した。
「ほら、抱いてあげて。壊れはしないから」
用心深く、エイドリアンの腕に赤ん坊を置く。
「イーサン、お父様よ」
息子の顔を見おろすと、かわいらしい大きな青い目がエイドリアンを見つめている。彼はこれまで感じたことのないような胸の痛みに襲われた。
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