【ハーレクイン豆知識:ハーレクインとBL】
意外に思われるかもしれませんが、ハーレクインのエロティカ作品にはゲイカップルも登場します。中には、ヒロインの旦那様(ヒーロー)には男の恋人がいた……!というちょっと衝撃的な作品も。日本でBL(ボーイズラブ)と呼ばれているジャンルは、アメリカではM/M(Male/Male)と呼ばれるそう。ボーイズラブへの萌えは世界共通なのですね。
【作品紹介】
ケイティとディーンは同僚で友人同士。ケイティは最近出会ったジミーとの微妙な関係のことも打ち明けるし、筋金入りのゲイボーイであるディーンが、新しい男と一晩中フェラチオにふけっていたおかげで今朝の会議に遅刻してきたことも、渋々だが許している。だが、ジミーとまだセックスまで至っていないことをからかわれたとき、彼女は思わず言い返した——女を知らないあなたにはわからない、と。「女とヤラないからって、女をイカせられないわけじゃない」ディーンも応酬し、宣言した。「僕が君をイカせてやるよ」思いがけない挑戦を受け、ケイティは期待に震えた。男しか愛さない美しいディーンの、魅力とワザを一身に受けることを想像して。
いつまでもこんなことをしていたって、何も始まらないわ。ケイティは自分に腹が立ってきた。私のこと、どう思ってるの、と彼に訊きたい。私はあなたが電話で話してくれる物語の登場人物と同じ、あなたの心の中の住人にすぎないのかしら、と。あなたの声を聞いていると自然に笑みがこぼれてくるの、と彼に伝えたい。もっとあなたと親しくなりたい、と打ち明けたかった。
ジミーが彼女の肩越しにカウンターへ目をやった。
「コーヒーのお代わりをもらってくるよ。君は?」
ケイティは首を振った。
「ううん、私はいいわ」
脇を通り過ぎるとき、またしてもジミーが彼女に触れた。肩に手を置き、ほんの一瞬、指で彼女の肩をつまんだ。その瞬間、張り詰めていたケイティの感情の糸がぷつんと切れた。 無意識のうちに立ち上がり、ケイティは後ろも振り返らず店を飛び出した。吹き荒れる風が目にしみる。泣いてるわけじゃないわ、と自分に言い聞かせ、ヒールの音を響かせて歩道を歩いた。 ジミーが追いかけてきたのは、細い路地に差しかかろうとしたときだった。
「ケイティ!」
ジミーは彼女の肘をつかみ、名前を呼ばれてはっとなったケイティを振り向かせた。彼はつかんだ肘を離そうとしなかった。
「おい。待ってくれよ」
やめて、と言おうと口を開いた。それとも、無言で立ち去ろうとしたのだろうか。自分でもよくわからないうちに、ジミーに唇をふさがれた。口を開き、むさぼるように彼女の唇を吸いながら、彼は両手を彼女の腰に回すとぐっと抱き寄せた。ジミーの唇は想像していた以上にすてきだった。キスはますます激しく、彼女を抱いた腕の力はますます強くなる。 唇を離したとき、ジミーは肩を大きく上下させ、息を弾ませていた。探るようにケイティの瞳を覗きこむ。
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