以前にあぶらいれを探しにいったけどいまいち好みのものがなく、まだきちんと物を買ったことのなかった通寺町の荒物屋にいって、お風呂のイスを買った。
加寿子荘二階奥の風呂場には、入居当時に新品の木製スノコとイスが備わっていましたが、イスが三年の使用を経て劣化し、腐ったのかかびたのか、真っ黒になっていたのだ。
荒物屋の主人は、荒物屋にふさわしく、荒かった。いろいろと。
お店の中には、おそらく百歳近い、主人のお母さまと思われるひとも腰かけていて、しっかりとお客さんを相手している。彼女は、弱々しいけど芯のある声をしていて、牛込にふさわしいとおもう。
しかし主人はそれを邪険にして、「いいよいいよ!何もしないで奥にいろよ!あぁもうそれもオレがやるからよ!あーあーもう全くうるっせえなあこの音楽は止めろっつうの」と、むかむかの矛先が母やら商店街の音楽やらいろんなところに向きますが、お客さんに接するときはくるりといいおっちゃんに裏返ります。背が小さめで重心の低いどっしりとした体格で、だいぶはげあがった頭とたれ目に愛嬌があります。
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