【ハーレクイン豆知識:ペットネーム】
今作ではヒロインの父親がヒロインのことを「スウィートハート」と呼んでいますが、自分の恋人や家族に対する愛称を英語圏では“ペットネーム”と言うそうです。なお、この「スウィートハート」という呼び方はアメリカで人気の呼び方だそうですが、イギリスでは呼ばれたくない愛称トップ5にランクインしています。文化の違いは奥深いですね。
【作品紹介】
伯爵の恋愛交渉術 禁じられた恋のゆくえ Ⅱ
ロウィーナが政治家の父と暮らす屋敷に、 イギリス人の伯爵コリンが滞在することになった。 ハンサムで気品に満ちた彼をひと目見た瞬間、胸はときめいたけれど、 よみがえる苦い記憶が淡い恋心を打ち消した。 冷たく厳格な父。家を出た母。一夜で消えた恋人。 誰一人私を愛してはくれなかった。 夕食後、ロウィーナがプールで泳いでいるとコリンが現れ、 以来、二人は夜ごとプールサイドで語り合うようになる。 ところがある夜、コリンが悲しげに言った。 「ぼくは君が好きだ。だが君を好きになってはいけないんだ」 いったいどういうこと? ロウィーナがその意味を尋ねると……?!
ロウィーナは神経質になって震えながら部屋から出ると慎重に階段をおりた。ハイヒールは久しぶりなので、社交界への復帰で階段から転げ落ちて尻もちをつきたくはない。階段をおりながらコリンの姿を捜したが、見当たらなかった。
「ロウィーナ!」
足が大理石の玄関広間についたとたん声をかけられ、顔をあげると父親の旧友がいた。
「こんばんは、リチャーズ下院議員」
頬を差しだし、相手のキスを受けた。
「ご無沙汰しております」
「父上からきみは体調がすぐれないと聞いたが」
「もう調子がよくなったので」
「妻のキャロルを覚えているかな?」
リチャーズが夫人を手で示した。
「もちろんですわ」
奥方と頬に軽くキスして挨拶を交わした。
「お会いできてうれしいです」
「ロウィーナ、今夜はまた一段ときれい!息子さんはお元気?大きくなったでしょうね!」
「ありがとうございます。二歳半になりました」
「子供の成長は早いわね。そういえばわたしの友人のスージーを覚えていて?」
キャロルはロウィーナの腕を取って紹介しに行った。 それから十五分ほどは次から次へと紹介を受けた。大方は顔見知りだったが、上院議員の側近グループには新しい顔ぶれもいた。不思議なものでみんな彼女に会えて本当にうれしそうだ。忍び笑いも陰口もなし。ロウィーナはまるで……自分がいるべき場所にいるように感じた。とはいえ、本当に会いたい人の姿は見当たらなかったけれど。 玄関広間も応接室も政治家から俳優、映画会社の重役まで上院議員の支持者であふれかえっていた。給仕が美味な前菜やシャンパンを満載したトレーを運び、応接室の両端にあるバーに客が群がっている。