シンプルであることにこだわりつづけたのがスティーブ・ジョブズ
「心の澱を取り去る」「過去の成功体験を捨てる」とは、本質のみを浮き上がらせることである。別の言葉でいえば、余計なものを捨て去って「シンプル」にするということだ。
この「シンプル」ということに徹底的にこだわったのが、アップル創業者であるスティーブ・ジョブズ氏だ。『Think Simple』(ケン・シーガル著、NHK出版)という本のなかに、ある印象深い話が書かれている。
アップルが販売しているノートパソコンは、MacBook Air とMacBook Pro の二種類。それぞれディスプレイの大きさやCPU、メモリ容量などが異なるモデルが数種類、販売されてはいるが、基本的にはユーザーはMacBook Air とMacBook Proのどちらにするかという視点で選べばいい。
一方、『Think Simple』によると、二〇一一年十一月時点で、HP(ヒューレット・パッカード)のノートパソコンのラインナップは、三三種類以上、デルは一八種類だったという。これらの商品はそれぞれ特徴が重なっている部分が多く、自社の販売員ですら各モデルの違いを顧客に明確に説明できなかったという。
ではユーザーが、アップルの商品戦略とHPやデルの商品戦略のどちらを支持しているか。答えは言うまでもないだろう。
シンプルさの追求を怠っているのは、日本の家電メーカーも同じである。テレビにしてもパソコンにしても、やたらとたくさんのモデルをつくりつづけている。
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