天才のつくり方

第10回】マイケル・サンデルの講義は「黒船」だった。

教育の根幹にあるのは、やはり国づくり。これからの日本のためにどんな人材を育てていけばいいのかを考えていくと、まず変わるべきは教員の側であることに気づく。ハーバードの教授ですら全員はもっていない、これからの教員に必要な資質とは?

明治時代には「富国強兵」があった。ではいまは?

北川 日本の教育を変革するような新しい教育機関をつくるなら、前提として「この国がどういう人材を必要としているか」という考えを決めておくべきだと思うんですよね。

茂木 なるほど、国としての人材観か。明治期には「富国強兵」という、非常に明確なミッションステートメントがあったよね。それにそって人材を育成したら、国力はぐんぐん上がり、列強と肩を並べるようになった。これは、近代まれに見る成功物語だったと思う。でも今は、そういう明確な国家ビジョンがないんだよなあ。

北川 国家としてのビジョンがないから、経済的な観点が最優先になって、言われたことを言われたとおりにやる「工場労働者」を養成するための教育が主流になっているんだと思います。

茂木 暗記重視の詰め込み型教育ね。しかもそれって、いま必要とされる産業には合ってないよね。日本では、いまだにメーカー的な発想から抜けだせずに、人間を代替可能なリソースだと思っているふしがある。

北川 それでは、知的生産性の高い人を育成することはできないですよね。

茂木 新しい日本のビジョンを考えるとなると、かなり大きな話になってくるので、いったん教育に絞って考えようか。どういう人材を育てたらいいというアイデアはある?

北川 そうですね、やっぱり自分の人生のコンテクストをデザインできる人が、もっと増えたらいいと思います。これまでの日本では、社会が自分のコンテクストをつくってくれていたと思うんです。それにそって生きていけば、まあまあ幸せになれた。でも、だんだんそれは変わってきています。

茂木 たしかに、昔はいい大学に行って、いい会社に入って、結婚して、家を買ってという、決まったルートがあったけど、いまはそんなのないからね。選択肢が多様化して、こうすれば幸せというルートがなくなってきた。

北川 そこで、「自分はこれをしていたらすごく幸せ、だからこういう人生を生きる」という、欲求に基づいたコンテクストを、子どもの頃からデザインしていく力が必要になると思うんです。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
天才のつくり方

茂木健一郎 /北川拓也

日本経済が停滞して久しい。一方で、アメリカではIT産業の新しい成功モデルがどんどん生まれている。この違いはどこにあるのか。 ここで登場するのが2人の天才。高校卒業後、8年間ハーバード大学で活動している理論物理学者・北川拓也。一方、1...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード