中村朱里さんの症状
中村朱里(高校2年生)
—— 率直に映画の感想はいかがでしたか?
中村朱里(以下、中村) 喉が渇きました(笑)。普通映画ってポップコーン食べたり、飲み物を飲んだりとかして、楽しむものじゃないですか。そんな余裕なかったですね。なんか……すごい苦しかったです。見てて、ふわぁって。
—— 印象に残ってるシーンは?
中村 印象に残ったっていうか、見れなかったのが、ボク(清水尋也)が、遠藤那美(二階堂ふみ)の耳を切るシーンが一番見れなくて。あのシーンが一番いやでした。他のグロいところは全然まともに見れてたんですけど。
ボク(清水尋也)はもともと普通の子で、ただのいじめられっ子だったのに、加奈子(小松菜奈)のせいで壊れてっちゃった。うわー、人ってこんなに変わっちゃうのかなぁって思って、すごい衝撃的でした。
—— 加奈子(小松菜奈)のことはどう思いましたか?
中村 憧れるのはわかります。どんなとこにいてもなんか、いちばん綺麗で狂っていて。
でも、結局彼女、「愛してる」とか言ったくせに、愛してないじゃないですか。気に入った子とかを言葉で丸め込んで堕としたりして。でも、結局何するかっていったら、堕としたままじゃないですか。ただ見てるだけ。だから加奈子の気持ちがどこにあったんだろうって。一体何がしたかったのかなって思いました。
—— もし加奈子(小松菜奈)に出会ってしまったら?
中村 どうなんですかね。クラスメイトで話す程度で終わってほしいです。あんな風になりたくないです。こわいです。
わたしは、うるさいし、わーきゃー言っちゃうほうなんで興味もたれないと思うんですよ。てか持ってほしくないです。見てるだけでいいです。
—— 狂った人がいっぱい出てきたけれども、彼らのことはどう思いましたか?
中村 一番怖いなって思ったのが、先生(中谷美紀)ですよね。なんか子供のために、そこまでできるんだなって。わたしの経験を振り返っても、あぁ、親ってこういう存在なのかもしれないって。子供を守るためなら、いい人にも悪い人にもなっちゃうんだなって思いました。親って、なんにでもなれるんだなって。
藤島昭和(役所広司)もそうじゃないですか。なんだかんだ、あんなに殴られたりとかされてるのにも関わらず、いつまでたっても娘の加奈子(小松菜奈)を探すわけじゃないですか。やっぱり親子ってなんか、特別なんだなって思いました。
—— 登場する人々の狂気は理解できましたか?
中村 理解できない人はいないですね。だいたい言いたいことはわかります。
「みんな、なんで加奈子に夢中なるの?」って、二階堂ふみちゃんの役の彼女も、彼女なりに、加奈子ちゃん(小松菜奈)に憧れてたわけじゃないですか。
まぁ、憧れの人っているわけで。やっぱり憧れてる人とか、好きな人のために尽くしたいって思っちゃって、好きとか憧れとかって強いから、その人に何されても痛くもかゆくもないんですよね。だから、わかるなって思いました。
—— 映画を見て「人間らしさ」って、なんだと思いましたか?
中村 出てくる人たちって、みんな自分のことに対して一直線だったじゃないですか。で、みんな一方通行じゃないですか。なんていうんだろう……人間って、なんだかんだ言って、自分のことしか見えてないのかなって。誰かのために、とかじゃなくて、自分のためにしか行動してないのかなって思いましたね。
—— 暴力、薬物、性犯罪など、いろいろ刺激的なものが出てきましたが、リアリティは感じられましたか?
中村 過激過ぎて、リアリティは感じられなかったです。ただ、もしも自分のまわりでこういうことが実際に起こっても、度が過ぎちゃって、「現実離れしてるな」って思うと思います。
だから、完全に傍観者でしたね。映画見てて本当にありうる世界かなって考えちゃって。今の自分の現実とかけ離れすぎているから。
—— 映画『渇き。』を友だちには薦めますか?
中村 オススメします。えぐい人間ドラマだよって(笑)。ただ、血が苦手な人は見られないですよね。あと、何も知らない純粋な子に見せたら、どういう反応するのかなって思います(笑)。
—— 今日はみなさんに見せるのが、すこし心配でした。
中村 全然大丈夫です。楽しかったです。ずっと見たかったんで、すごいうれしかったです。
井早匠平さんの症状
井早 匠平 (高校2年生)
—— 率直に映画の感想はいかがでしたか?
井早匠平(以下、井早) 楽しかったです。映画としてはすごい楽しかった。新鮮さがあったっていうか。シーンの切り替えとかが、今まで見た映画のなかでこういう切り替え方は全然なかったので、斬新というか。過去と今を切り替えていく感じも、最初は慣れなかったんですけど途中から慣れてきて、こういうのもありかなと思いました。
—— 狂った人がいっぱい出てきたけれども、彼らのことはどう思いましたか?
井早 思ったより夢物語っていう感じはしませんでした。なんか、それぞれ登場人物が荒々しい人たちで、僕にはそれが大きな不安を抱えているように見えて。
この人たちの場合は暴力とか、激しい行動に移っただけであって……わりと身近に感じました。
—— 加奈子のことはどうですか?
井早 加奈子だけは唯一わけわかんなかったっていうか。一番人間味を感じさせないキャラでした。「どうしてそんなことをするの?」っていう。
ほかの人からは不安とかを感じたけれど、この子からはなんも感じられないし。逆に不安が大きすぎても見せない、他人が気づくようなレベルじゃないのかもしれないですけど。ほんとに底の底に落ちたような状態で、社会のモラルとかも全く考えずに、100パーセント欲望みたいな人。でもこういう人もいるんだろうな、って思いましたね。実社会にいそうだなって思いました。
—— もしも加奈子に出会ってしまったら?
井早 加奈子に出会ったら……でも、ボク(清水尋也)と同じ道をたどると思いますよ。勝てる気がしないです。
—— 狂った大人たちを身近に感じるところもあったのはなぜでしょう?
井早 たぶん僕にもこうやって狂った行動に出る素質はぜんぜんあると思うんですよ。他の人は分からないけれど、とりあえず僕にはそういう素質があると思う。みんないつもは当たり前のように隠してるけど、心の奥底にある深い不安を前面に表したときにこうなるんだよ、というのを感じました。
映画終わったあとは何言おうかな、と思ったんですけど、エンドロールが終わって席を立つときにふとそれを思いました。すごい人間離れしたことをやっているけれどすごい人間味を感じたっていうか。
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