暴力的でカッコいい女たち
—— 最近の深町さんの作品は、女性を主人公にしたものが多いですよね。『八神瑛子』シリーズ(幻冬舎文庫)は女性刑事、『ダウン・バイ・ロー』(講談社文庫)は女子高生。
深町 今度の新刊『ジャックナイフ・ガール』(宝島社文庫)はスケバンが主人公だね。
—— しかも、そのどれもが強くて暴力的で強烈な女性ばかり。
深町 『ダウン・バイ・ロー』は少し青臭さが残ってるけど、『八神瑛子』は完璧に娯楽路線で割りきって書くようになったから、一層強烈になってるかもしれない。女性を書くときは、自分の好み書いているんですよ。
—— えーっと……強烈な女性が好みということですか?
深町 おれは女性に殴られるのが好きみたいで。
—— マゾ宣言ですか(笑)。
深町 ははは(笑)。強い女性が好きなんですよ。ジェームズ・キャメロンとか、『キル・ビル』の感じみたいな。最近はそういう自分の好みに合わせて、金的蹴りをするような女性が主人公の小説ばかり書います。
—— 深町さんの書く女性たちは、暴力的なだけじゃなくてかっこ良さもありますね。『八神瑛子』シリーズではアクションシーンがバンバン出てきますし。
深町 そういう豪快なのがマイブームなのかな(笑)。
—— 今回の『渇き。』では、小松菜奈さんの熱演もあって加奈子の存在が際立っていますよね。原作『果てしなき渇き』(宝島社文庫)を読んだ時には気が付かなかったんですが、加奈子はまさに深町作品における女性像の原型に思えました。
深町 あぁ、当時は意識して書いてはなかったけど、たしかにたぶらかされたいとか蹴られたい、翻弄されたいと思って書いてたね。
—— まさに加奈子です(笑)。
深町 自覚的になったのは、『八神瑛子』シリーズを書き始めたころからかな。違いを挙げるなら、今は娯楽であることを強く意識して書いているから、暴力的なだけじゃなく、スタイリッシュで魅力的な女性を書くように気をつけてますね。この女になら一発シバかれてもいい、ケツバットを食らってもいいなっていう女性を描くのがプロの仕事ですから。
—— 好きな人にはたまらないですね。
深町 そういう意味では、今回の映画は中島監督が娯楽として、加奈子を藤島に負けないくらい強烈で魅力的に描いてくれましたね。
—— 加奈子の物語としてもおもしろかったです。
深町 原作以上に加奈子を強調して魅力的に描いていただいたと思います。もちろん、原作の加奈子との違いもあるし、10年前と比べて俺自身の心境の変化もある。その辺りを改めて40枚ほどのサイドストーリーを書いたのでそちらも見て欲しいです。
『果てしなき渇き』に込められた思い
—— 『果てしなき渇き』が発売されて10年ちかく経ちました。深町さんは、発表した作品はあまり気にかけないとお聞きしましたが。
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