【ハーレクイン豆知識:億万長者】
ヒーローと言えば億万長者! と言ってもいいくらい、ハーレクイン作品には数多くの億万長者ヒーローが登場します。『ひれ伏した億万長者』『誘拐された億万長者』『愛を買った億万長者』……等、“億万長者”とつくタイトルだけでも何と250作品以上の作品が出版されているんです(※再版分を数えます)。作品の数だけ、いろんな億万長者がいるんですね。
【作品紹介】
ヒラリーはシカゴ行きの飛行機で隣り合わせた男性を見て目をみはった。 彫りの深い顔立ち。ミステリアスな緑の瞳。なんてセクシーなの! 思わず見とれた彼女はすぐに自分を戒めた。外見に騙されてはだめよ。 誠実だと信じていた恋人に、裏切られたばかりでしょう? でも気のせいかしら。どこかで彼と会ったような気がする……。 その夜参加したオークションで、謎はとけた。目玉商品として出品されたタキシード姿のゴージャスな男性の名は、“トロイ・ドノヴァン”。 有名な億万長者だったのだ。彼は高額で“夢の週末デート権”を 秘書に落札させたあと、自分がデートの相手を指名すると宣言した。 歓声にわく客席に下りたトロイが、どんどん近づいてくる。まさか……? 彼は瞳をきらめかせ、ヒラリーを見据えた。「デートの相手は、君だ」
トロイは上体を傾けていき、ふたりの体が触れる寸前で止めた。ヒラリーの息遣いが速まり、胸が大きく上下している。大きく見開いた瞳が彼の視線を受けとめた。
やがてまつ毛を小さく震わせながら目を閉じた。
薄暗がりのなか、トロイは顔を近づけてそっと唇を重ねた。ヒラリーの唇はライムの味がした。
肩を抱いてキスを深め、唇の合わせ目を舌でなぞると、やがて口が開いた。もれてくるため息に、勝利の喜びがうねるように込みあげる。機内で初めて目にした瞬間から、この場面を頭に思い描いていた。ヒラリーはうっとりと酔いしれるだけでなく、積極的にお返しをしてきた。
肩の上にすべり落ちてくる絹のような髪にトロイは指を走らせた。髪の束が指にからみつく感触に、電流のようなものが血管を走り抜ける。
ほかの女性には感じたことのない特別な相性のよさに、トロイは欲望を抑えることができなくなった。彼女の腰のカーブや胸に手を這わせたい。肘のくぼみや膝の裏にキスし、感じやすい場所を見つけたい。脳内でふくれあがる妄想を実行に移すのに、今週末ほど理想的なタイミングはない。
ヒラリーは彼の胸に手を置き、シルクのマフラーを握りしめてさらに引き寄せようとしている。
その熱っぽい動きにトロイの興奮はいや増した。マフラーが宙を舞い、たがいに服を脱がせ合って……と妄想はどこまでもふくらんでいく。
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