捨てる」ことが苦手な日本人

強いソニーを支え、グーグル日本法人社長を務めた経験から言えることは、「過去の成功体験は捨てなさい」――これからの新しいビジネスルールの見取り図とは? そして、そこで生き抜くために必要な素養と覚悟とは?
PHPビジネス新書『成功体験はいらない』より、一部を公開します。

日本人はもともと「捨てる」ことが得意だった

 日本人は元来、「捨てる」ことが得意だった。
「捨てる」といっても、古いものや過去の蓄積をやみくもにかなぐり捨てることではない。よき伝統や習慣をしっかりと踏襲しながら、不要なものを整理して手放し、新たな気持ちで心機一転スタートを切るということだ。

 そんな日本人を象徴するような儀式が、昨年(二〇一三年)開催された。二十年に一度行われる伊勢神宮の「式年遷宮」だ。私も十月に参拝させていただいた。
 日本で最高の権威と歴史をもつ伊勢神宮だが、じつは二十年に一度、その社殿は新しく建て替えられている。それは飛鳥時代から、つまり千三百年にわたって延々と続けられ、今回が六二回目というのだから驚きである。
 遺跡や歴史のある建造物を尊び、後世のためにそれらをそのまま保存しようとする努力も重要だが、ここには、単なる保存とはまた別のかたちで伝統や文化を継承する日本人の知恵が秘められている。

 この式年遷宮によって、伊勢神宮は古代遺跡にならずに、いまなお日本文化に息づいた存在として残っているのだ。訪れるのはいにしえしのぼうという「観光客」ではなく、さまざまな願いや悩みをもったその時代時代の「参拝客」だ。そして、この式年遷宮で社殿が定期的に建て替えられることで、古代の技術が延々と継承されてきた。

 私はここに、日本人の「捨てつづけるからこそ継続的に発展することができる」という 知恵の原点が息づいているように感じる。

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成功体験はいらない

辻野晃一郎

グーグル、アップル、アマゾン。圧倒的な意思決定のスピードはどこから生まれてくるのか? ソニーを経てグーグル日本法人社長を務めた著者は、「しがらみを捨てると世界の変化が見える」と指摘します。 新しいビジネスルールの見取り図と、そこで生き...もっと読む

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