日本人はもともと「捨てる」ことが得意だった
日本人は元来、「捨てる」ことが得意だった。
「捨てる」といっても、古いものや過去の蓄積をやみくもにかなぐり捨てることではない。よき伝統や習慣をしっかりと踏襲しながら、不要なものを整理して手放し、新たな気持ちで心機一転スタートを切るということだ。
そんな日本人を象徴するような儀式が、昨年(二〇一三年)開催された。二十年に一度行われる伊勢神宮の「式年遷宮」だ。私も十月に参拝させていただいた。
日本で最高の権威と歴史をもつ伊勢神宮だが、じつは二十年に一度、その社殿は新しく建て替えられている。それは飛鳥時代から、つまり千三百年にわたって延々と続けられ、今回が六二回目というのだから驚きである。
遺跡や歴史のある建造物を尊び、後世のためにそれらをそのまま保存しようとする努力も重要だが、ここには、単なる保存とはまた別のかたちで伝統や文化を継承する日本人の知恵が秘められている。
この式年遷宮によって、伊勢神宮は古代遺跡にならずに、いまなお日本文化に息づいた存在として残っているのだ。訪れるのは
私はここに、日本人の「捨てつづけるからこそ継続的に発展することができる」という 知恵の原点が息づいているように感じる。
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