第33回】なぜ、こんなにも消化不良な試合が続くのか? 日本×ギリシャ

20日に行われた日本とギリシャとの一戦は痛恨の引き分け。コートジボワール戦に続く消化不良の試合で、他国からも、眠気を誘う試合、などと批判を受けています。「どうしてパワープレーをしたのか?」「ザックの采配はどうなんだ!?」そして、「僕らの日本代表のサッカーはどこへいったのか?」。ギリシャ戦後、気持ちを整理できていない方も多いのではないでしょうか? ここで一回、ギリシャ戦を落ち着いて振り返ってみましょう。「日本は何がしたかったのか?」「ギリシャはどんなプレーをしてきたのか?」「そして、日本には何が足りなかったのか?」。コロンビア戦に向けて、日本人の心を整えるためのレポートです。

許すことができない、ギリシャのアンチプレー

ギリシャ戦の感想戦を始める前に、一つだけ言っておきたいことが…。

「それでも、サッカー好きか?」

ギリシャ戦では、そんな問いかけをされたような気がする。
ピッチに寝転がって時間をつぶしたり、明らかな判定にしつこく抗議したり、大騒ぎしてファウルをアピールしたり……。ギリシャの“アンチプレー”、いや、プレーと呼べない行為がとにかく見苦しい。真面目に見れば気分が悪くなり、なんとなく見れば眠くなる。残念ながら、そんな試合になってしまった。

ギリシャが10人になってからの時間帯、日本の選手はどういう気持ちでプレーしていたのか?

「いや…。あの時間稼ぎにはイライラしましたね。正直ね。プレッシャーかけたら、すぐ倒れるし。それでファウルもらうし。ちょっとね。サッカーをしてる感じじゃなかったです」

吉田麻也に「正直者」と呼ばれる、今野泰幸はそう言っていた。日本のサッカーで、あれほどあからさまに勝ち点をねらうチームはないから、余計にそう感じたのだろう。

また、今野は、何度も繰り返したクロスから点が取れなかったことについて、審判の影響も挙げてくれた。

「ペナルティーエリアの中にボールを入れていかないと、点にはつながらないし、一回は相手のボールになるかもしれないけど、そこで奪い返したときにはすごくチャンスになる。ただ、クロスをクリアされたとき、僕らは切り替えてボールを奪い返していたけど、全部そこでファウル取られちゃったから。あれはリズムが狂ったなと思いましたね。あの審判の判定は。別にファウルじゃなくて、ボールを奪っているのに、体がちょっとぶつかったらすぐファウル取られたし。相手が1人退場したから、有利にしたのかもしれないけど」

キプロス戦後の居酒屋サッカー論では、引いた相手に対して『カウンター返し』がポイントになると書いた。しかし、カウンターを返す前にファウルになってはどうしようもない。押せ押せの流れを切られてしまう。カツラニスの退場は、皮肉にも日本にとって大きな足かせになってしまった。

僕はギリシャのディフェンスを称賛する。さすがに堅い。球際も強い。しかし、それとアンチプレーは話が別だ。ギリシャは良い守備をした。が、同時にアンチプレーをした。僕はこれを「執念」という言葉で片付けるべきではないと思う。ギリシャが見せた「執念」と、コスタリカやガーナが見せる「執念」は全く質が違う。ギリシャの執念は、僕には認められない。

……という話をすると、「それもサッカーだよ」と言い出す人が必ずいるけど、僕は賛成しない。ルール上で黙認されるなら何をやってもいいとは思わない。倫理に反している。アンチプレーをする選手も、人も、この社会に増えないほうがいいに決まっている。だから僕は賛成しない。

このスポーツには驚くほどの自由が許されている。審判が見ていないところで、あるいはその目を欺こうと思えば、さまざまなズルができてしまう。接触して「痛い」と本人が言うのなら、信じるしかない。本人の良心に委ねられる部分が大きく、人間性がそのままダイレクトに表れる。サッカーはその辺りの曖昧さが、面白いところでもある。

だからこそ、こういう行為を支持するか、拒否するか。サッカーの未来を作るファンが、ハッキリと姿勢を打ち出すべきだと思っている。母国イングランドのファンには、そういう気質が根付いているが、日本はまだまだ弱いと思う。

改めて言うが、僕はギリシャのアンチプレーが嫌いだ。こんなことは減ってほしい。自分の好きなサッカーは、社会の悪を映し出すだけでなく、社会を善に導く存在であってほしい。それは僕のサッカー観でもある。

コートジボワールが決勝トーナメントに進出したら、僕は拍手で送り出すだろう。しかし、ギリシャの場合は同じようにはいかないかもしれない。

ギリシャに対して効果的だった『ワンサイド攻め』

さて、0-0で終わったギリシャ戦の内容に話を移そう。ザックの采配に批判が集まっているけど、個人的には、むしろコートジボワール戦よりも良かったと思っている。

「ん? いつもと違うな」と感じたのは、キックオフの瞬間だ。

日本のキックオフは、本田圭佑がドリブルで“前に”運ぶところから始まるケースが多い。何となく後ろに下げるよりも、最初から前に出ることでアグレッシブに試合に入る。心理的に相手を上回るための重要なポイントだ。

うまくいかなかったコートジボワール戦でも、後半開始の日本のキックオフは、前へボールを運び、相手を一度押し下げるところからスタートしている。そして、そのまま後半の序盤は日本がペースを握った。(数分後のドログバ登場にかき消されたが)

ところがギリシャ戦では、キックオフのボールを本田がサッと後ろに下げている。何か意図があるのかと思って各選手の動きを見ていたら、その変化はすぐに表れた。ワンサイドへの絞り込みだ。

この試合の組み立ては、いつも以上に左サイドに片寄っていた。長友佑都を早い段階で高い位置へ送り出し、その裏のスペースを山口蛍がカバー。長谷部誠もそれに合わせて左サイド寄りにポジションを取る。大久保嘉人もスタートポジションは右サイドハーフだが、すぐに中央へ入る。

組み立てを左サイド側に絞った『ワンサイド攻め』。全体が同じサイドに寄ることで、日本にとってやりやすいコンパクトな距離感でプレーできるし、さらにボールを奪われた後、周囲がコンパクトであるために、素早くプレッシャーをかけてボールを奪い返せる。

この戦法がギリシャに対してハマった。特に重要だったのは、日本の弱みと考えられていたギリシャのカウンターの威力を、かなり軽減させたことだ。

象徴的だったのは、岡崎慎司と山口蛍のスタートポジションだ。

この試合は香川真司がスタメンから外れ、岡崎が左サイドハーフに入った。また、コートジボワール戦では長谷部が左ボランチ、山口が右ボランチだったが、ギリシャ戦では並びが逆になり、山口が左ボランチに移っている。

岡崎と山口。プレッシングの強さに定評のある2人を、ワンサイドに絞った左サイド側に置いた。その意図は明白だ。コンパクトな中でボールに厳しいプレッシャーをかけ、ギリシャをそのまま左サイドに閉じ込めること。ギリシャがカウンターのスイッチを入れようとしても、その縦パスの出所を自由にさせない。

前半に日本がボールを奪われたとき、逆サイド側にいるサマラスがフリーになることが多かった。ここに大きく展開されると危なかったが、しかし、パスの出所に厳しくプレッシャーがかかっていたので、日本がカウンターを食らう機会は限定的だった。

この試合は「アグレッシブに臨む」と予言していたザックジャパンだが、ギリシャのカウンター戦術を鑑みると、ただ無防備に攻めるだけでは相手の術中にまんまとハマってしまう。そうなれば、本当に最悪の結果を招いていたかもしれない。

このような勝敗を分けるキーポイントに関して、左サイドに絞ることでリスクを軽減し、攻守のバランスを安定させたのはザックの手腕が表れた部分だと思う。

さらに相手の右ウイングには、「ギリシャのメッシ」と呼ばれる小柄なドリブラー、フェトファツィディスが起用されたが、この試合ではメッシの香りが少しも感じられなかった。むしろ、彼の守備の甘さばかりが目立つ始末だ。長友のオーバーラップに戸惑うギリシャのメッシは、まるでコートジボワール戦の香川を見ているかのようで、それを誘発した日本のワンサイド攻めは見事だったと思う。

もっとも今野は、「(フェトファツィディスが)出るとは思ってなかった」と言っていたので、左サイドへの絞り込みが『ギリシャのメッシ対策』として機能したのは偶然かもしれないが…。

現状でザックへの批判が噴出する理由はよくわかる。たしかに、ギリシャが1人退場した後の采配に関しては、疑問を抱くところは多い。とはいえ、まずは前半、ザックのゲームプランがうまくハマったことは事実なので、この点は指揮官の能力として認めざるを得ないところだ。

どうして、パワープレーを選択したのか?

そして…。
「パワープレーをするのは日本の特徴に合わないのではないか?」
「青山敏弘を入れるべきだったのではないか?」

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居酒屋サッカー論 ~誰でもわかる深いサッカーの観方~

清水英斗

「ボールだけを見ていても、サッカーの本当の面白さはわからない!」日本代表戦や欧州サッカーなどを題材に居酒屋のサッカー談義を盛り上げる「サッカー観戦術」を解説します。「サッカー観戦力が高まる」の著者、清水英斗さんによる、テレビ中継の解説...もっと読む

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shayashi41 サッカーだけに適用する話ではないなコレ。 https://t.co/ojbmm6B1vq http://t.co/5niMej8Lgz 3年以上前 replyretweetfavorite

513MHz 明日は全力で応援しよう。「なぜ、こんなにも消化不良な試合が続くのか? 日本×ギリシャ」 http://t.co/R1Bgont3ym 3年以上前 replyretweetfavorite

rhapsody_FCB 「 ワールドカップでも練習試合でも、サッカーをやっている以上は負けたくない。“いつもそう思っている”と内田は言った。 」 なぜ、こんなにも消化不良な試合が続くのか? 日本×ギリシャ|清水英斗|居酒屋サッカー論 https://t.co/Edsv9uFvQE" 3年以上前 replyretweetfavorite