こんにちは。数日前にイタリアのヴェネチアから戻ってきたばかりで、まだ時差ぼけが抜けません。実はぼくは2014年ヴェネチア建築ビエンナーレ日本館の、エグゼキュティブ・アドバイザーというご大層な肩書きをもらっているのだけれど、この建築ビエンナーレが6月頭にオープンだったもので、前回の記事を書いた直後からヴェネチアにでかけて、いろいろ展示の準備とか、オープニングのイベント仕切りとかをやっておりました。もっとも、ぼくは肩書きにも関わらず、ほとんど何もしなかったので大変心苦しい限り。ちなみに日本館というのは、こんな感じ。
多くの方は、ヴェネチアの建築ビエンナーレなんてあまり興味がないかもしれない。ビエンナーレはイタリア語で2年に1度の意味で、アートビエンナーレと交互に行われているのだ。そしてこれまでは各国を代表するスター建築家を選んでその作品展や新作展みたいなものが展開されていたのだけれど、これではアートビエンナーレと同じだ!と今年の総親分レム・コールハースが一念発起して、自国の過去100年のモダニズムをふり返るという共通テーマを各国に与えて、それにそってみんな展示を考えた。
あまり詳しい話をしても、関心のない人多いだろうけれど、日本館では、そういう近代の見直しみたいなネタは1970年代に結構やられているし、その当時から出てきたおもしろい建築的な試みをごちゃっと集めて、お蔵出しの倉みたいなのをやろうというコンセプトを、歴史工学が専門である早稲田大学の中谷礼仁教授を中心にやっていた。結果は以下の写真。
2014年の11月末までやっているので、イタリア方面にお出かけで、少し建築なんかに興味がある方は、ちょっとごらんあれ。グランプリは取れなかったけれど(グランプリはお隣の韓国館が取りました)、個人的には日本館はいちばんおもしろいし、楽しい館だったのではないかと思っているのだけど。
で、そんな建築展にいたこともあって、少し都市建築がらみの話。今回も、モダニズムという問題を提起するにあたり、コールハースはそれがいろんなところに画一性をもたらして世界をつまらなくしてるんじゃないか、という問題意識を匂わせていた。どこへいっても、似たような団地とオフィスビルばかり。そしてモダニズムの根拠になっている合理主義は、非人間的なものだとケチをつけられることが多い。モダニズムで合理的に作られた団地はすぐに無機質だの自殺が多いだの、果ては殺人鬼を生み出すだのと言われるし、合理的な都市計画に基づいて作られたつくば学園都市も、さんざん悪口を言われてきた。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。