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この世を牛耳る資本主義のルール
先日、朝日新聞社が発行している『AERA』という雑誌で、「年収1千万円の研究」という特集が組まれ、年収1000万円以上の人たちの実態を取材していました。
そこで主に語られていたのは、「この仕事内容で、この給料は割に合わない」「しんどい」という嘆きの声でした。激務すぎて、身体を壊してしまったという方もいました。
「年収100万円」時代もあり得るとささやかれる中で、年収1000万円は超高級取りです。世間一般から考えれば、「目標」とされることが多い金額です。
それなのに、当の1000万円プレーヤーたちは、幸せそうではないのです。しかも、自分が幸せでない理由を言える人は少ないのです。「しんどい」という自覚はあっても、どうすればそこから抜け出せるかがわかっていません。
一体なぜなのでしょうか?
それは、ぼくらが生きているこの社会のルールに気づいていないからです。そのルールに気づいていないために、知らない間に"負け"ているのです。たとえ1000万円稼いでいても、"負け"てしまっているのです。
「1000万円プレーヤーが負け組だなんて、そんなことはあり得ない!」
いえ、そんなことがあり得るのです。もちろん1000万円プレーヤーの全員が"負け"なわけではありません。このルールを知らない人が"負け"ているのです。
お金と働き方のルールを知る者だけが勝つ!
スポーツやゲームをはじめるにあたって、ルールを聞かずにプレーする人はいないでしょう。仮にルールを知らずに始めたら、正しい手が打てずに「ルールを知っている人」にボロ負けします。当たり前の話です。
初めてやるゲーム、スポーツに呼ばれたら、「どんなルールになってるの?」と、まずルールを聞きます。どこにボールを蹴れば点が入るのか、どうすれば負けてしまうのか。どうすれば点を取りやすいのか、そのためにどんな作戦があり得るのか。どうすれば点を取られてしまうのか、そのために鉄則として知っておかなければいけない"守備"とはどんなものか?
まずはそういったことを聞いてからプレーを始めます。それを聞かずに始めたら相手にボコボコにやられます。当たり前の話です。
受験をする時も、傾向と対策を探ります。過去問を研究したり、過去問を研究しつくした人に"ノウハウ"を聞いたりして、自分が勝ちやすい方法を学びます。当たり前の話です。
しかし、その「当たり前」であるはずのことを、ぼくらは自分の労働には当てはめて考えません。
社会に出る前に、実社会で仕事をする時には、何をしたら"勝ち"なのかを学ぶ人はほとんどいません。どうすれば勝ちやすくなるのか、どうすれば"負け"になってしまうのか、"負け"ないためにどんな傾向と対策があるのかを学びません。というより、それを知ろうとする発想も持っていません。
ルールを知らなければその環境の中で適切に振る舞えないのは当然です。社会のルールや構造を知らなければ、望む結果が出ないのは当然のことです。
とはいっても、実社会はゲームやスポーツとは違います。ルールブックが明示されているわけではありませんし、「ルール説明」の場があるわけでもありません。
会社の上司が知っているとも限りません。場合によっては、定年を迎えるまで結局ルールがなんだかわからなかったという人もいるのではないでしょうか?
その資本主義社会のルールは「経済学」から読みとることができます。ぼくは大学で経済学を学び、実社会のルールを(なんとなく)感じ取りました。社会人になってからは、仕事の現場で、経済学の理論が当てはまっていることを確認できる場面がいくつもありました。
そして、その経済学の中でも、"今の日本経済のルール"を最も鋭く、かつ明快に示しているのが『資本論』だということに気づきました。
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