ブラジルにスパイクを持っていくカズが好きだ
みんな、三浦知良のことが好きだ。例えば、東日本大震災発生後すぐに行われたチャリティマッチで劇的なゴールを入れるカズ。ケガに悩まされ出場機会に恵まれなくとも横浜FCの支柱であり続けるカズ。でも私はそれより、今回のワールドカップにJFAアンバザーとしてブラジルへ飛び立つ彼が「スパイク? もちろん持ってきた」(サンスポ)と、あわよくば出場をほのめかすように答えるところが好きだし、なでしこのワールドカップ優勝後、メンバー全員にくまなく一輪のバラを送るようなところも好きだ。どの世界にもベテランはいる、しかし、ただただ「やめない」という状態と、(カズの著書タイトルから引っ張れば)「やめないよ」と申し出た上で前のめりに続けるのとでは、残り方の状態として全く異なる。ベストセラーとなった『やめないよ』(新潮新書)に続く著書のタイトルは『とまらない』(同)である。『とまらない』のあとがきを、次回のタイトルは何になるかな、今度も『とまらない』かな、と締めくくっている。ここで「もう使っちゃったけどね」などと普通のツッコミを入れないのがカズらしい。本気で次回も『とまらない』で来るのかと思わせるのがカズである。後述するが、このガチな前のめり、矢沢永吉っぽいんである。
サッカー雑誌よりも日本酒マガジンに登場する中田英寿
書店へ出向き、ここぞとばかりに乱発されているサッカー雑誌コーナーを覗く。やはりこのワールドカップで盛り上がる時期、次々とこのコーナーにお客さんがやってきて、立ち読み継続中のこちらは1歩、2歩、3歩とカニさん歩きで横へ移動させられる。ふと、隣の料理雑誌コーナーに中田英寿が表紙の雑誌を見つける。ダメじゃないか、雑誌を読んだら元の位置に戻さなきゃと雑誌を面陳棚から引っこ抜くと、それは中田を大フィーチャーした日本酒マガジンなのだった。日本酒という日本文化を世界に伝えたいと意気込む中田が、3歩隣の棚から大舞台へ向かうサッカー日本代表を見つめている。
スパイクを持っていくカズ、蹴鞠を蹴らずに見学するヒデ
ものすごく感覚的だけどもなんとなく共感してくれそうな言葉を慎重に選んで書き残すと、「クールジャパン」という標語から動き出すプロジェクトがいまいちクールじゃない感じがするサンプルの1つに「サッカーを辞めた後の中田英寿」が位置づけられてはいないか。言うならば「クールジャパン」のボランチ的存在。今回のワールドカップの必勝祈願として彼は、日本サッカーの起源とも言われる蹴鞠を伝える京都・下鴨神社へ行き、蹴鞠をする伝統衣装を着用。その上で「神事なので僕のような素人がやってはいけない」(日刊スポーツ)との見解を示し、蹴鞠には参加せずに見学に留めた。ブラジルに一応スパイクを持っていくカズ、伝統を守り蹴鞠をせずに見学するヒデ。恣意的な比較だが、こうして比べるとやっぱりカズって好きになりやすい人だし、ヒデって好きになりにくい人だ。
音痴なのに大声で君が代を歌ったカズ
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