BAPAの一期生は、約30人。3~4人ずつの10チームに分かれ、7月に発表する卒業制作の作品をつくります。課題は「外国人に『Fantastic! SHIBUYA!』と言ってもらう作品」。完成品は、ヒカリエの展示スペース「8/(ハチ)」に展示する予定です。
今回の授業は、作品の出来を大きく左右する「テクニカルディレクション」について。
技術的な観点からプロジェクトを監督するテクニカルディレクターは、現在、さまざまなクリエイティブの現場で必要とされています。PARTYのニューヨークオフィスで働く清水幹太さんと、バスキュールの小野寺正実さんという、現役で活躍する名うてのテクニカルディレクター2人が、講師として登場しました。
言葉にできないおもしろさを、つくって伝える仕事
清水幹太(しみず・かんた/PARTY チーフ・テクノロジー・オフィサー)東京大学法学部在学中(のち中退)から都内のデザイン事務所を経てDTP組版等に従事。2005年12月に株式会社イメージソース/ノングリッドに参加し、本格的にインタラクティブ制作に転身、クリエイティブ ディレクター、テクニカル ディレクターとしてウェブサイトからデジタルサイネージまでさまざまなコンテンツ企画・制作に関わる。2011年4月から株式会社パーティー クリエイティブディレクターに就任。現在はニューヨーク勤務。カンヌ国際広告祭: 金賞、AdFest: グランプリ等、受賞多数。【最新作】Cut Copy “We Are Explorers"
テクニカルディレクターとはなにか。簡単に言うと技術監督ですよね。プロジェクトの中で、アイデアをどう実現していくのか考え、実作業をするエンジニアとコミュニケーションを取りながら、もっともよい方法を探していく人。私の場合は、企画を立案してプレゼンテーションするという、クリエイティブディレクターのような仕事もします。
私の考えるテクニカルディレクションの役割は、大きく分けると2つあります。
1.言葉では説明できないものをつくる
2.言葉で説明しているものを実現する、それを超えるものをつくる
通常、テクニカルディレクターの役割と聞いて、想像するのは2だと思います。でも、実は世の中って言葉にできないことで満ちています。99.9%はそうかもしれません。企画書にして説明できることなんて、0.1%くらいなんです。「よくわからないこと」をかたちにして伝えたり実現したりする。それが、テクニカルディレクションの一つの役割だと思っています。
言葉では説明できないものをつくるというのは、つまり「なんかいい」をつくるということです。言葉にできない素敵なことにアプローチするために、それを実際にさわれるようにしたり、見えるようにしたりすることが必要になってきます。テクニカルディレクターが企画に入る意義が、そこにあるのかなと思います。
(ピロン♪)と思ったら、嫁からLINEが……(会場・笑)。じゃあLINEの話でもしましょうか。
LINEって機能的には、今までにあった普通のメッセンジャーツールと変わらないんです。でも私たちに爆発的に浸透したのは、「なんかいい」かんじだったからですよね。ニューヨークにいる嫁に「おはよー」ってメッセージを打つと、実は通信的にはまだきちんと送られていないのに、すぐ送られたかのように見える。そういう見せ方をしているからです。
この「すぐ届いた感じ」の気持ちよさがLINEの人気の一つの理由なのだと思います。でも、それって企画書では説明しづらいですよね。「すぐ届く感じがします」って文字で読んで、「それって、そんなにいいの?」って思いませんか。つくって動かしてみないと、伝わらない。99.9%の言葉にできないことというのは、こういうことも含まれます。