村の風景や匂いがずっと自分のなかにあった
柳瀬博一(以下、柳瀬) 今回は三浦さんの小説『神去なあなあ日常』が『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』というタイトルで映画化されたということで、改めて『神去(かむさり)』シリーズについて話をおうかがいします。
三浦しをん(以下、三浦) よろしくお願いします。
柳瀬 僕も先日映画を観てきましたが、映画も小説も、それぞれ味わいがあって非常におもしろかったです。林業というニッチなテーマであんなにおもしろく、成長ドラマが描けるとは。
三浦 実は、父方の祖父が今回の映画のロケ地のひとつである美杉村(現在は津市美杉町)出身なんですよ。
柳瀬 あ、実際にお祖父様が林業をされていたんですか。
三浦 そうです。でも、社会科の教科書には、林業は「斜陽産業」って書いてあるし、本当はどうなのかなって気になってたんです。
柳瀬 斜陽産業(笑)。
三浦 村には子どもの頃から遊びに行っていました。林業自体は、さらに山の中でやるので、実際の作業を見たことはなかったんですが。製材所などは目にすることがあったんですけどね。それで、林業って結局なにをしているんだろうと、大人になってから調べて、おもしろいと思ったので小説にしました。
柳瀬 じゃあ、三浦さんのなかにはもともと神去村に通じるDNAが組み込まれてるんですね。
三浦 そうですね。村の風景や匂いみたいなものは、自分の中にずっとありました。
柳瀬 映画の中で、山に向かう男たちがトラックの荷台に乗りながら「木遣り唄」を歌いますが、あれも実際聴いたことがあったんですか?
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