「いくよーっ!!」
会長がドラムスティックを打ち鳴らす。
軽快な前奏から、アップテンポの曲が始まる。
ルカ先輩が歌い出すと、呼応するように歓声があがる。
わたしは、ただ無心でキーボードを叩き続けた。周囲を見る余裕なんてない。間違えないようにと、必死だ。
ただ、音だけは聴こえる。体に響いてくる。
わたしには楽器のことはわからないけど、練習中にレンが教えてくれた。
ドラムは全体のリズムを作ってバンドの作るすべての音を導く、縁の下の力持ちなんだ。
ベースは目立たないように見えるけど、ここがしっかりと仕事をすると音に驚くほど厚みが出る、重要なパートだ。
ヴォーカルだって、音程をとるのがうまいだけじゃダメで、聴く人を元気にするような心を震わせる魅力が必要なんだ。
そんな説明が、担当する生徒会メンバーたちをそのまま表しているようだった。
その時、会長がレンに言っていた。
「うしろはアタシらに任せて、ギターは目立て。派手にやるんだよ。自由に遊んでいいからね」
今、その言葉をまっすぐに受けて、レンはパフォーマンスを交えながら飛び回っている。ヴォーカルに寄り添ったり、それぞれのパートに近づいてきて合わせるように弦を弾いたりするから、視界に飛び込んでくるのだ。
スポットライトに汗の玉がきらめいている。向けてくれた輝くような笑顔に、体の硬さがとれるようだった。
第12回 RIN on the stage メランコリック
2014年7月3日
文化祭のステージに立ったリンたち生徒会のメンバーは、大勢の声援に胸を熱くした。そして、いよいよ演奏が始まる――。
Youtubeとニコニコ動画での動画再生数が360万回を超えるボーカロイド楽曲「メランコリック」が遂に小説化! 書籍発売を記念して、一部を公開します。
Youtubeとニコニコ動画での動画再生数が360万回を超えるボーカロイド楽曲「メランコリック」が遂に小説化! 書籍発売を記念して、一部を公開します。