「そ、そうだ! オレ、ギターならできるっす! あ、役に立たないかな……」
すっかり温かくなった空気の中で、照れ隠しに絞り出したようなレンの言葉だったけど、今度は会長がガタッと勢いよく立ち上がった。
「それだーっ!!」
えっ? と集まる視線のなか、いつもの会長らしく大きな胸を張る。
「アタシもドラムならできる! カイト、キミも楽器できたよね? 中学では吹奏楽部だったし!」
慌てたのはカイト先輩だ。
「え、ちょ、待ってください会長。ギターにドラムって、まさかバンドでもやるつもりですか? 楽器っていったって、僕の担当はバイオリンだったんですよ?」
「ベースならいけるだろ? おんなじ弦楽器なんだし、だいじょーぶだいじょーぶ」
「そ、そんな無茶な…」
「ルカは? なにか楽器できる?」
「私ですか? 昔習ってたので、ピアノだったら少しは」
「よーっし! キーボード決定! いいじゃんいいじゃん! じゃあ残るは……」
とんとん拍子に進む話のなかで、さいごに視線が向いたのは、当然わたしのほうだ。
すかさず横からレンが言う。
「あ、リンなら歌、いけるっすよ。おまえ、昔はよく歌ってたよな?」
「イヤッ!!」
ほとんど瞬間的だった。頭が真っ白になって、気が付いたら叫んでいた。絶叫に近かったかもしれない。勢いよく流れる空気を、わたしが止めてしまった。
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