東京六本木の森美術館で、新しい展覧会がはじまりました。「ゴー・ビトゥイーンズ展 こどもを通して見る世界」。子どもの存在を主たるテーマとしたグループ展です。
子どもという存在には、さまざまなイメージがついて回りますね。無垢で純粋なもの、守られるべきもの、未来の象徴など、いろいろあります。今展で着目しているのは、何にも捉われないゆえに、どんな境界も自在に行き来することのできる子ども特有の能力。
そう、たしかに子どもたちは、立場や地位、国籍などは気にせず他者とかかわることができますし、この世ならぬ世界や、人間以外の存在ともあっさりと交信できるようなところがありますよね。そうした子どもの特殊能力を見据えることによって生まれた作品が、集められているわけです。
会場に足を踏み入れて、まず目立つのは写真作品。愛らしく、ときに切なさも感じさせる子どもの姿を捉えた写真には、無条件に見入ってしまいますね。かわいらしさは時代を易々と超えます。米国のフォトジャーナリズムを確立した作家ジェイコブ・A・リースやルイス・W・ハインの写真が撮られたのは19世紀末~20世紀初頭といいますから、およそ100年前。でも、そこに写る子どもたちの屈託のない表情、純粋さをたたえた瞳は、今のそれとまったく変わりありませんよ。
ハインらに対して、現代の日本の子どもを撮ったのが小西淳也《子供の時間》。自分の家でひとり、何かをする子どもの様子はずいぶん孤独に見えます。けれど、その近寄りがたい雰囲気をじっと観察していると、ただ孤独なだけではないように思えてきます。彼らにはすでに、だれにも邪魔されたくない自分だけの世界が確立されているのであって、そこに大人がズカズカと土足で入っていってはいけないんじゃないか。そんなことに気づかされます。
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