2014年5月4週目の主なできごと
・東京五輪便乗する詐欺が多発 被害1億3千万円超(5月19日)
・羽生、名人戦4戦全勝で奪取 史上初3回目返り咲き(5月21日)
・8月11日「山の日」成立 2016年から祝日に(5月23日)
・国内のエイズ発症1年間で484人 過去最多に(5月24日)
・AKB握手会襲撃 メンバーら3人負傷(5月25日)
『小悪魔ageha』のインフォレストはなぜ倒産したのか
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) ギャル雑誌『egg』が5月31日発売の7月号で休刊しましたね*1。
*1 ギャル雑誌「エッグ」が休刊- WWD japan .com
速水健朗(以下、速水) ヤンキー再評価的な流れがマスメディア的にある中、ギャルの終焉の声が聞こえてくるようになってる。そうか、先月は『小悪魔ageha』の版元であるインフォレストも事業停止して話題になったしね。けど、この問題「ついに出版不況がここまできた!」みたいな声も多かったけど、これ出版不況関係ないよ。もともとインフォレストは、ファンドが買収して、英知出版と部門を切り離してできた会社でさ。
おぐら 英知出版は『デラべっぴん』とかを出していた出版社ですね。
速水 そう。それでエロ本じゃない方の側がインフォレストになるんだけど。そこで持ちビルが売却されて、仕事のできるスタッフが放出されていった。そんな逆風の中で、編集長になった中條さんが個人のがんばりで『小悪魔ageha』をヒットさせたわけで。
おぐら 会社としては出版事業で儲ける気はなかったってことですか?
速水 買収したファンドとしては、少なくとも出版社として存続させるつもりはなかったんじゃない? 似た事例をいまはなき某スポーツ系出版社で見たことがあるけど、あれは不動産売却を目的とした半ば計画倒産的なものだと思う。できる人が離れていくタイミングとか、典型的なたたみ方だなって感じ。
おぐら 中條さんも退社の前後は特に、経営サイドへの不信感を示していました。よく言われている付録をつける問題が顕著ですが、雑誌の公式通販サイトも自分はやりたくなかったって。あれだけ『小悪魔ageha』でムーブメントをつくってきた超優秀な編集者なのに、それを会社のエースとして立て直しに起用するんじゃなく、結果として辞めることになったっていうのがその象徴かもしれません。
速水 出版社で失敗してるとこって不動産だったり、本業以外の理由が多いよね。出版事業自体は低リスク中リターンの事業なので、大半はそこまで大きな赤字にはならない。大手は別としても、中小の出版社は、たたむことはあっても、大負債を抱えるってまず考えにくい。
おぐら 話に出ている『小悪魔ageha』の元編集長の中條寿子さんですが、18歳のときに創刊された『egg』を読んで編集者を志したとインタビューで応えていました。「絶対にいつかeggを超えてやろうと思って編集者になろうと決めたんです」*2と。
*2「小悪魔ageha」編集長にインタビュー、世の中には「かわいい」か「かわいくない」の2つしか無い - GIGAZINE
速水 『egg』は1995年の創刊。この年は、ヤンキーからコギャルへの転換の年でもあった。中條さんは両方を知ってる世代のはず。
おぐら あの誌面を見て、私もギャルになりたい!とか雑誌に出たい!とかじゃなく、さらに先を見て編集者になりたい!と思ったっていうのが素晴らしいなぁって。出会ったのが18歳というタイミングもありますけど、それで本当に自分で雑誌を創刊して、影響を受けたギャル文化を発展させて大成功を収めるって、カルチャーの循環としてもすごく美しい。
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